職場で感情について話すことはできる

「職場で感情について話すことはできない」というマネジャーの言葉を聞くことは珍しくない。これに対処する方法は2つある。

 第1に、困難な議論はどれもそうだが、規範を変えるにはリーダーシップと実践が必要だ。この数年間で何も学んでこなかったリーダーが「私たちはそのように働いていない」と言ったところで、それが変化に抵抗するための正当な言い訳にはならないだろう。人々がいまもパンデミックによる孤独や孤立に悩んでいる中では、なおさらだ。

 第2に、仕事における感情経験は、たとえその話をしたくないと思っても、仕事がどのように遂行されるか(あるいは遂行されないか)に影響を及ぼし続ける。職場の問題から生じる感情的影響に関して議論を避けることは、会計上のミスを無視して、そのミスがいつかなくなることを期待するようなものだ。それでは何も変わらないし、不可避の結果に対処する術を失うだけだ。賢明なリーダーは、職場のあらゆる問題を表面化させ、集団で解決するよう従業員に促す。

 さらに、筆者らの研究によると、職場環境全体でリレーショナルポーズを促進することで、個人のウェルビーイングを向上させる以上の変化をもたらすことがわかった。粘り強さやレジリエンス、コミュニケーション、知識の共有、協調、システム思考なども向上する。

 職場でのつながりが深刻に脅かされる時代に突入した。パンデミックは沈静化しつつあるかもしれないが、多くの企業ではリモートワークやギグワーカーが増える一方、人とつながる機会が減るという「ニューノーマル」に向かっている。

 セルフケアは常にメンタルヘルスの中に含まれるが、従業員のウェルビーイングの向上に真剣に取り組もうとしているリーダーは、逆境を個人中心で捉えることから脱却する必要がある。ウェルネスを実現するためには、仕事の進め方の根幹に真のつながりを組み込まなければならない。

 そのためにはまず、苦しみは集団で所有するものだと認識することだ。集団のパーパスやミッションのために団結した時、私たちは仕事そのものだけでなく、その仕事をすることで生じる感情経験に対しても相互に責任を負うのだ。


"Stop Framing Wellness Programs Around Self-Care," HBR.org, April 04, 2022.