●時間給という枠に囚われることなく考える

 有給のインターンシップは、赴任手当や住宅手当と同様、低所得世帯の学生がエントリーする際、現実に存在する壁を乗り越える助けとなる。ただし、ネットワークや人脈を構築するためには、さらなる壁がある。一緒にランチを食べたり、コーヒーを飲んだりして、濃密な信頼関係を形成して意見を交わすためにも、お金が必要だからだ。

 そのような状況を鑑みて、インターン生に日々の食事手当を支給する動きがある。「私たちは、すべての学生に1日20ドルの食事手当を支給しています」と、非営利団体ファースト・ワーキングの設立者兼会長のケビン・デイビスは言う。

 同団体は、ニューヨーク市の過小評価グループに属する高校生に、インターンシップを提供している。デイビスは、アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)の研究者ブレント・オレルによる最近のインタビューで、この手当の目的はインターン生が人とつながる時間を確保することだと説明している。

「ポイントは、ソーシャルキャピタルの構築と関係づくりにあります。たとえば、同僚から『仕事が終わったらコーヒーを飲みに行こう』とか『昼食は一緒にサンドイッチを食べよう』と誘われた時、参加できるようになります。このような職場での交流を通じて、メンターを得られるのです」と、デイビスは言う。

 ●マネジャーを割り当てるだけでなく、網の目のようなサポート体制を構築する

 経営者はたいてい、インターン生にスーパーバイザーをつけるし、メンターを割り当てることさえある。日々の業務を監督するのであれば、それで事足りるかもしれない。しかし、CERESインスティテュートの研究によると、インターン生が成功を収めるうえでは、網の目のような支援的つながりが不可欠だという。

 たとえば、オールド・ネイビーのディス・ウェイ・オンワードというプログラムは、雇用の問題に直面する16歳から24歳の青少年に、キャリアで成功するための基盤となる、最初の就職の世話をしている。プログラムの参加者は、社内のスーパーバイザーのほか、ジョブコーチ(企業が提携する地域の非営利団体に所属)、「お兄さん・お姉さん」(若い従業員)、同年代の仲間とつながることができる。

 この網の目のようなサポートは、効果を発揮しているようだ。プログラム修了者に実施した調査によると、同年代の青少年のうち安定した雇用を確保している人の割合は55%に留まるが、このプログラムに参加した人では72%に上る。

 企業は、「お兄さん・お姉さん」が提供する見過ごされがちなメリットに、特に注目すべきだ。若い従業員は知識や経験は浅いかもしれないが、他のメンターにはないノウハウや共感性を提供できる。

 サーチ・インスティテュートによる最近の研究で、低所得層の学生や有色人種の学生のキャリアの可能性を広げる支援を行う団体を調査した際、年齢や経験が近しい同僚との関係性は、最も多くのリソースの提供につながると明らかになった。たとえば、人とのつながりや、教育や雇用の目標を達成するのに役立つスキルや識見などのリソースである。