『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)の最新2022年9月号は「チームを成長させる『世代』の力」です。米国では史上初めて、5つの世代(沈黙の世代、ベビーブーム世代、X世代、ミレニアル世代、Z世代)が一つの職場で働く時代を迎え、世代間の緊張が高まっています。世代間の対立を乗り越えて、年齢の多様性を競争力に変える方法をお伝えします。
ステレオタイプに囚われていないか
米国では史上初めて、5つの世代(沈黙の世代、ベビーブーム世代、X世代、ミレニアル世代、Z世代)が一つの職場で働く時代を迎え、世代間の緊張が高まっています。ひとたび対立が起こると、ステレオタイプに囚われた非難の応酬が始まるといわれます。
「ベビーブーム世代の考え方は現実離れしていて傲慢」
「X世代は斜に構えていて無気力」
「ミレニアル世代は権利ばかりを主張する」
「Z世代は自己中心的で、一生懸命に働きたがらない」
日本の職場においても、世代間の衝突は絶えません。その時、リーダーがこうした世代論に囚われてしまうと、問題の本質を見誤り、離職率の上昇やチームの業績の低迷につながることでしょう。
そこで、今号の特集「チームを成長させる『世代』の力」では、世代間の対立を乗り越えて、年齢の多様性(エイジダイバーシティ)を競争力に変える方法をお伝えします。
第1論文は「エイジダイバーシティの価値を最大限に引き出す方法」です。上記で触れたような、世代間の対立における問題の本質から、年齢の多様性をチームの力に変える取り組みまで、特集のエッセンスを紹介します。
第2論文の「職場の世代間対立をどうすれば解消できるか」では、世代をめぐってステレオタイプが生まれる原因について考察します。そのうえで、職場の同僚と良好な関係を構築する方法を提案します。職場での振る舞いやキャリアに望むものが世代によって著しく異なる証拠はないと指摘します。
第3論文はIMD の教授らによる「若手の視点を経営戦略に取り入れる4つのステップ」です。年齢や立場の差を乗り越えて、若手社員から、経営に対する新鮮で有益な意見を集めるにはどうしたらよいのでしょうか。その方法について、筆者らは「影の取締役会」(シャドーボード)の活用を促します。
第4論文は、「世代にまつわる偏見がなくならない理由」です。世代に対するレッテル貼りがなくならないのは、人材管理の考え方や意思決定において長い間、それが便利な仕組みであったからです。筆者は、偏見がはびこるメカニズムを明らかにし、職場から偏見を取り除く方法を提案します。
米国では2024年に労働力人口の25%近くが55歳以上になるといわれます。第5論文「シニア人材が企業を支える時代」では高年齢労働者の存在にフォーカスし、差別を助長する2つの定説を挙げて、その誤解を解きます。シニア人材の活用は、集団の結束力を高め、組織にイノベーションをもたらすのです。
特集最後の論文は「エイジズムを克服するためにマネジャーは何をすべきか」です。労働者の約65%が年齢差別(エイジズム)を経験したことがあるといいます。職場のリーダーはそうした差別と立ち向かわなければなりません。筆者の実体験を交え、エイジズムとの戦いから学んだことをお伝えします。
世代論には説得力があるように見えるものの、そのほとんどに根拠がなく、偏見の上に成り立っていることがわかります。リーダー自身の偏見を取り払い、職場における年齢差別をなくす姿勢を示すことが、各世代の力を引き出すための第一歩です。
最後に、特集論文にあった印象的な文章をご紹介します。
「言い古されているのはわかっているが、人間は誰しも年を取るものだ。ステレオタイプに頼ろうとする衝動を抑え、自分とは異なる年代の同僚への批判を慎むために、筆者はおまじないを唱える。『あの人は過去の自分。あの人は将来の自分』と」
ぜひご一読ください。
(編集長・小島健志)