ダイバーシティを拡大すべき根拠として、ビジネス上の理由を掲げる企業がこれだけ多いことを考えると、リプレゼンテーションの乏しい集団に属する求職者が説明に説得力を感じ、そのような企業で働くことに関心が増すことを期待するかもしれない。だが残念ながら、これに続く5つの研究では、正反対のことが示された。

 まず、LGBTQ+(性的少数者)のプロフェッショナル、STEM(科学、技術、工学、数学)分野の女性、そして米国の黒人大学生の計2500人以上に、求人企業のウェブサイトに掲載されているメッセージを読んでもらった。当該の企業がダイバーシティを重視していることに関して「ビジネス上の理由が示されている」「公平性の理由が示されている」、もしくは「特に理由は書かれていない」の3種類だ。

 そのうえで、その組織にどのくらい帰属意識を抱けると思うか、ステレオタイプに基づいて自分が判断されてしまうことにどのくらいの不安を感じるか、そしてその企業に就職することにどのくらいの関心があるかを尋ねた。

 その結果、明確な違いが明らかになった。ビジネス上の理由からダイバーシティを支持するメッセージを読んだ被験者は、公平性の理由を掲げたメッセージを読んだ被験者に比べて、その企業に覚える帰属意識は11%低く、ステレオタイプに基づいて扱われることへの不安が16%高く、自分と同じアイデンティティ集団の別のメンバーと交換可能な存在だと見なされることへの懸念も10%高かったのだ。

 ビジネス上の理由に基づいてダイバーシティを支持することの弊害は、中立的なメッセージと比較すると、よりいっそう顕著だった。ビジネス上の理由を読んだ被験者は、中立的なメッセージを読んだ被験者に比べて、その企業に覚える帰属意識が27%も低く、ステレオタイプに基づいて扱われることへの不安も27%高く、自分が交換可能な存在だと見なされることへの懸念も21%高かった。

 さらに、ビジネス上の理由に基づいてダイバーシティを支持するメッセージを読んだ被験者は、「その企業のダイバーシティの取り組みは、純粋なものである」という認識が最大6%低下した。これらの要因すべてにより、その企業で働くことへの関心が低下するという結果になった。