完全を期するため、ダイバーシティを正当化する3つの方法が、リプレゼンテーションが十分ある集団に属する求職者にどのような影響を与えるかを探った。その結果、そこまで一貫性のある結果は得られなかった。

 ある実験では、STEM分野の男性求職者は、どのタイプのメッセージを読んでも、その企業に感じる帰属意識や、その企業に就職することへの関心に違いはなかった。

 ところが、白人学生の求職者に同様の実験を行ったところ、リプレゼンテーションの乏しい集団に属する求職者と同じように、ビジネス上の理由を掲げるメッセージを読んだ学生は、公平性を理由にするメッセージを読んだ学生や、中立的なメッセージを読んだ学生に比べて、ステレオタイプに基づいて扱われることへの不安が大きく、その企業に対して覚える帰属意識は低く、その結果として、その企業に就職することへの関心も低かったのだ。

 表向きは善意に見えても、ビジネス上の理由に基づいてダイバーシティを拡大することは、リプレゼンテーションに乏しい集団に属する求職者を惹きつける最善の方法ではないようだ。それどころか、リプレゼンテーションが十分ある集団に属する求職者に与える印象も悪くなる可能性がある。

 しかし、それはなぜなのか。この問いに答えるには、ビジネス上の理由として実際にどのようなことが言われているかを検証することが助けになる。

 ビジネス上の理由は、リプレゼンテーションに乏しい集団に属する求職者が、その組織にはこれまでなかったスキル、視点、経験、働き方を提供してくれることを前提としている。つまり、そのような「ユニークな貢献」こそが、ダイバーシティのある企業に成功をもたらすというのだ。

 このナラティブは、ダイバーシティを道徳的な要請ではなく、事業資産と見なし、自社の業績を押し上げる限りにおいて有用だとする考え方だ。またそれは、組織が求職者に対して、企業への貢献をどのように判断するかという指標も示唆する。すなわち、スキルや経験ではなく、人種やジェンダー、性的指向といったアイデンティティに基づいて判断するという可能性だ。つまり、求職者をステレオタイプ化したり、非人格化したりするアプローチであり、求職者がその企業に覚える帰属意識を低下させる原因となる。

 究極的には、ビジネス上の理由に基づいてダイバーシティを支持することが逆効果になるのは、組織がリプレゼンテーションに乏しい集団に属する求職者を目的達成手段と見なしているという、さりげないがインパクトの大きいシグナルを送ることになるからだ。つまり、ダイバーシティの道具化である。それでは、たとえ企業が求職者と直接やり取りをする前であっても、ダイバーシティ拡大に向けた組織の取り組みを損なうことになる。