1. 戦略を明確化する

 最初の課題は、実行可能かつ実行すべき戦略を持つことだ。ある環境下で、どのような戦略が優れた戦略なのかを判断するのは難題であり、業界や競争環境を含む多数の要因に左右される。

 あなたの会社の戦略の妥当性については本稿の範疇を超える話だが、順調に実行できる戦略とは、それぞれの志と能力に合致した戦略であるはずだ。したがって、次の2つの問いが重要となる。

 ●戦略が志のレベルに合わせて適切に設定されているか

 戦略をめぐる志には、主に2種類の過誤がある。

 第1種の過誤は、不正確な楽観主義だ。これは非現実的、あるいは野心的すぎる戦略であり、「どうやっても、うまくいくはずがないのではないか」という疑念を誘発する。

 第2種の過誤は、不合理な悲観主義だ。野心的でない、あるいはあまりに平凡な戦略であり、「ふーん、それで?」といった反応を誘発する。

 ユニコーンやアクティビスト・ヘッジファンドの世界では現在、第1種の過誤のほうが多い。ただし、それは単に最近の流行やリスク選好の問題であり、言うまでもなく、壮大な志を掲げるほうが巨額の投資という見返りを得られる可能性が高い。いずれの過誤も、回避すべき誤りだ。

 ●その戦略に必要な能力を理解しているか

 戦略の明確化には、さらなるステップが必要だ。それは、戦略の実行に何が必要かを理解することである。

 第1段階は、新たな戦略に必要な組織能力を明確に特定することだ。他社には簡単に真似できないような能力を構築する必要がある。

 第2段階は、そのような能力を実際に構築できそうかどうかを把握することだ。この点では、既存企業は起業家に比べて保守的だろう。ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のハワード・スティーブンソンが、アントレプレナーシップを「コントロール可能なリソースを超越して、機会を追求すること」と定義したのは、もっともだ。

 戦略の明確化に役立つ1つの方法が、「プレモータム分析」(死亡前分析)と呼ばれる手法だ。未来の失敗を具体的に予測することで、エグゼクティブは自社の戦略の弱点を探り当て、実行に関する主要リスクを特定できるだろう。