●進捗状況の測定方法を知っているか、あるいは測定できないか

 実質的な変化は一夜にして起きるわけではない。私たちはそのことをわかっていても、ゆっくりとした漸進的な進歩には満足できないものだ。そこで、組織には、DEIの取り組みを測定するための計画が欠かせない。

 批判的人種理論の提唱者として知られる法学者で人権活動家のキンバリー・クレンショーは1988年、差別禁止法について次のように論じた。

「もはや加害者、明確に特定できる差別者というものは存在しない。たとえ、Z社が黒人やほかのマイノリティを雇用していないとしても、Z社が機会均等雇用者になることは可能だ。実際のところ、いかなる企業も宣言するだけで、機会均等雇用者になれる」

 筆者らは、外部からの要求を含む説明責任の指標が、より優れた、より迅速な変化を生み出す触媒になりうると考えている。たとえば、法律事務所において、契約交渉の段階で、チームの人種構成とジェンダー構成に加えて、請求可能時間、実質的な担当業務の数値化を要求すれば、ダイバーシティ目標について透明性を得られるだろう。

 法律事務所に限らず、ほかの業界でも、ベンダーやサプライヤーの選定と評価、黒人コミュニティ向けにサービスを提供する金融機関の支援をはじめ、ビジネスのDEIを実質的に進展させる必要性と結びつける方法は、さまざまにある。このような外部要件には、コンプライアンスに基づく罰則やインセンティブを活用することが可能だ。

 DEIの取り組みを、一時的な足場のまま放置していると、組織が撲滅すべき「インクルージョンの幻想」を生み出しかねない。DEIの取り組みが文化的・社会的必要性ではなく、単なるシグナルになってしまえば、道徳的責務は失われ、現状を維持するための広報・人事機能になってしまう。

 組織が、この不都合な現実に向き合うことを学ぶには、批判的な自己検証を行うしかない。批判的な自己検証には、共同責任と組織の説明責任という基盤と文化に基づいて、公平な職場環境をつくり出す力が秘められている。

 考えてみてほしい。1955年以降、フォーチュン500でCEOを務めた1800人のうち、黒人CEOは22人しかいない。いま現在も、フォーチュン500における黒人CEOはわずか5人だ。

 法曹界も状況は似たようなもので、黒人は極端に過小評価されている。パートナーのポジションに就いているのは、男性弁護士の1.36%、女性弁護士の場合は0.86%だ。同様の問題は、学術界や医学領域、STEM(科学、技術、工学、数学)分野でも見られる。

 このようなリーダーシップにおけるシステミックなギャップは、呼びかけの声にもかかわらず、黒人の意思決定者がいまもなお、テーブルに着くことができない現状を示すものだ。

 人種差別や性差別に基づくシステムに挑むには、まず、その不公平な状態を認めることから始めなくてはならない。そのうえで、差別に基づくシステムを維持するにせよ、破壊するにせよ、自社と外部パートナーの両者が責任を負う、新たな仕組みを構築することが必要だ。


"Are Your Organization’s DEI Efforts Superficial or Structural?" HBR.org, June 29, 2022.