リッター・コミュニケーションズとリッター・アグリビジネスの同族持ち株会社であるE. リッター・アンド・カンパニーを例に挙げよう。同社のキャッチフレーズは「130年以上にわたって、コミュニティに投資する」だ。投資先は、農場経営と電気通信製品・サービスという一見無関係のビジネスである。
これらの事業は、100年以上前の一族の投資から発展したものだが、3年前にリッター・コミュニケーションズの株式の過半数をプライベートエクイティ(PE)投資家に売却した際、一族は戦略を変更する機会を得た。
彼らは、その資金を個々の同族株主に分配するのではなく、資金を持ち寄り、持ち株会社であるリッター・インベストメント・ホールディングスの下で、第3のビジネスを展開することを選択した。
このケースは、数世代先を見据えた戦略を実現するために多角化に注力した例といえる。また「ある特定のビジネスを営むファミリー」ではなく、「ビジネスを所有するファミリー」とみずからを定義することで、将来について広く考える柔軟性を得ることができた。
何世代にもわたってビジネスを継続させるには、共同保有資産の多様なポートフォリオを通じて、一族が共有する富の拡大を重視した戦略が必要だ。分散化されたポートフォリオにより、ビジネスの所有者がコントロールすることのできない要因による、事業の浮き沈みを乗り切ることができる。
多角化と業績の関係は、逆U字型のカーブを描くことが研究で示されている。つまり、ある程度までの多角化は業績を向上させるが、多角化が進みすぎると業績は低下する。この研究が示唆するのは、既存事業に近い領域での多角化には意味があるが、中核事業から離れすぎると業績が低下するということだ。
マイケル・ポーターの研究では、企業は既存事業と関連性の低い分野の買収事業から撤退する傾向があることが示されており、非関連多角化の弊害が指摘されている。筆者も、この考え方に賛成している。
しかしながら、より最近の研究、そしてアルファベットをはじめとする企業の事例証拠からは、一部の企業は非関連多角化によって強力なリターンを実現できることが示唆されている。
実際、2018年の研究では、非関連多角化が業績に与えるネガティブな効果は、時間の経過とともに著しく減少していることが明らかになった。1970年代~90年代の企業は非関連多角化によって業績が低迷していたが、2000年以降、この影響は減っているというのだ。