男女が語る「自信」の中身

 筆者らは、自信が男女のキャリアに与える影響を理解するために、英国の財務・会計業界でディレクター、パートナー、エグゼクティブとして働く男性30人、女性36人のシニアリーダーに、精神分析に基づくインデプスインタビューを実施した。

 調査対象となったシニアリーダーに、自分のキャリア形成にとって重要だった瞬間や、その時にジェンダーに紐づく体験をしたかを説明してもらった。筆者らは特に、話の中で直接「自信」という言葉を使わずに、それぞれが「自信」という要素に触れるかどうか、触れる場合にはどのように言及するかを知りたいと考えていた。

 女性は、その大半(36人中33人)が、自分や他の女性のキャリアアップを阻む主な要因として、自信またはその欠如を挙げた。

 たとえば、ある女性は、同僚の男性と同等の給与水準を求めて、大幅な昇給を交渉すべきだったのに、それができなかった自分を責めて「もっと強く言えるだけの自信がなければいけませんでした」と言った。

 また、別の女性リーダーは次のように語った。「ある仕事に必要な資質が10あり、女性である自分に9つあるとします。ほかに手を挙げている男性が4つの資格しか持っていないとしても、女性は名乗りを上げないと思います。私は、女性が自信を持って自分自身の背中を押し、前に進めるように、リーダーとしてできることは何でもしたいのです」

 これとは極めて対照的に、男性の場合には、自分のキャリアに関連する要素として自信を挙げることはなかった。実際、インタビューを行った男性30人のうち6人が自信について口にしたが、それは女性のキャリア、特に女性は自信がなく見えることに言及したにすぎなかった。

 たとえば、ある男性リーダーは自分の考えをこのように述べている。「女性の同僚は(中略)自信がないように見えます。自分自身のことを過小評価して、長所をアピールするのではなく、短所にばかり目を向けようとします。なぜかはわかりませんが、女性パートナーは面談の席で、少し攻撃的な態度を取ることがあります。自信がないのか、何かを取り繕おうとしているのか、私にはよくわかりません」

 また、別の男性リーダーは次のように語った。「私のチームに、支配的で強力な『アルファオス』のようになろうとしていた女性がいました。明らかに別人を演じていたので、自分らしく振る舞わせようとしました。男性の仲間入りをするより、自分らしく仕事をしたほうが成功します。彼女に欠けていたのは自信です。非常に有能な人物だったのだから、それに見合う自信があれば、もっと成功したと思います」

 つまり「自信」とは、女性が使う場合も男性が使う場合も、「職場での女性の地位向上の遅れ」を説明するために用いられる、大きな性差を表す言葉なのである。