リーダーはいかに対処すべきか

 実践段階において、女性や他の過小評価グループの地位向上を促す戦略において「自信を重視しすぎる」という課題に対処するために、リーダーには次のことをお勧めしたい。

(1)「自信」という言葉の凍結を宣言する

 自信にまつわるナラティブが「性差に根付いたものではなく、また、女性を攻撃する凶器にもなっていない」とリーダーが確信できるまで、自信に焦点を当てることを一時的にやめることを筆者らは推奨している。フィードバックセッションや業績評価、昇進審査においては、特に注意すべきだ。

 そうすることで、リーダーは、女性の能力を高める別の方法(リーダーシップを発揮する明確な機会など)を探り、女性のキャリアアップを阻んでいる組織内の障壁を、より深く分析せざるをえなくなるだろう。

(2)バルネラビリティに対する評価を高める

 従業員の多様化が進むにつれて、旧態依然としたリーダーの行動様式や、既存の従業員を優遇するような規範や基準が疑問視されるようになっている。謙虚さやバルネラビリティにより価値を置くことで、自信を示すことに偏重した価値観を正すことができるだろう。リーダーとして、謙虚さやバルネラビリティを見せるような行動を抑制するのではなく、むしろ称賛することで、そのような価値観を醸成する機会とすべきである。

(3)研修プログラムを再設計する

 組織によっては、自信を高める「女性限定」のコースを提供することで、性別によって自信が必要だという認識を強めてしまっている場合がある。自尊心を高めるために支援を必要としている人がいるならば、最低限、ジェンダーアイデンティティによって対象を制限するのではなく、個人のニーズに基づいてそのような機会を提供することを、筆者らは推奨している。


 女性は、キャリアに関するアドバイスとして、自信について注意を受けることが少なくない。相手にしてみれば、よかれと思ってのことだろうが、本人は「ちょうどよい」自信を醸し出すという、余計な気力を奪われる綱渡りをさせられている気持ちになる。男性の場合には、めったに直面しない問題だ。

 これは女性の心理的ウェルビーイングを損なうだけではない。自信という側面にこだわることは、ジェンダー平等を阻む構造的障害への対処から、リーダーの目を巧みに逸らすことにつながる。このようなリスクとリターンを考えれば、いまこそ「当面は自信について云々しない」と宣言すべきではないだろうか。


"How Confidence Is Weaponized Against Women," HBR.org, October 20, 2022.