イノベーションには、4段階のプロセスに沿って異なるイノベーターが必要だ
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サマリー:組織がイノベーションを実現するには、問題を見出し、明確に定義したうえで、さまざまなアイデアの中から最良のソリューションを選び出し、実行に移す、という一連のプロセスが欠かせない。実際、イノベーターと呼ば... もっと見るれる人材は、それぞれのプロセスを得意とする4つのタイプに分けられる。そして、イノベーションには、すべてのタイプが必要だ。問題は、多くの組織でいずれかのタイプが欠けていたり、適切な比率で配置されていなかったりすることだ。本稿では、それぞれのタイプを定義し、従業員がどのタイプに当てはまるかを理解したうえで、組織が効果的にイノベーションを管理するためのフレームワーク「SMRT」を提示する。 閉じる

イノベーションフレームワーク
「SMRT」をどう活用するか

 あなたの会社では、どのようにして社内のイノベーターを見つけ出し、エンパワーしているだろうか。

 筆者らは合わせて40年以上にわたり、この問いについて探求を続けてきた。イノベーションスタイルに関する研究では、イノベーションを追求する際の人々のさまざまな嗜好や役割を特定し、検証している。組織は、この概念を理解することで、特定の人材が必要とされる場所や協働すべき人材を特定し、新たなブレークスルーアイデアを生み出すことができる。

 筆者らの最新の研究は、2006年10月~2021年1月の間に、可能な限り多くの組織の多くの人々から収集したデータを基にしている。10万人以上(正確には11万2497人で、男女比はほぼ同じ)がこれに応じ、筆者らは現在もデータを集め続けている。

 回答者は84カ国から集まり、マイクロソフト、アルセロール・ミタル、ボストン交響楽団、米航空宇宙局(NASA)、ユナイテッド・ウェイ、ハーバード大学(さらには『ハーバード・ビジネス・レビュー』も)など、さまざまな企業や産業で働いている。

 回答者には、問題を解決する際に好むことや得意なこと、さらに嫌いなことや苦手なことを答えてもらった。そして、それらの回答結果から、4つのユニークなイノベーションスタイルのうち、その人物の嗜好に当てはまるタイプを明らかにした。それぞれのスタイルは、4段階からなるイノベーションプロセスにおいて、異なるフェーズにマッピングされる。

 4つのスタイルはそれぞれ、組織において果たすべき役割を担っている。すなわち、新たな問題を発見する「ジェネレーター」、問題を徹底的に定義する「コンセプチュアライザー」、アイデアを評価してソリューションを選択する「オプティマイザー」、そして選択したソリューションを実行する「インプリメンター」だ。

 イノベーションには、この4つのスタイルがすべて必要だ。組織は、どの従業員がどのスタイルに当てはまるかを理解することで、イノベーションの取り組みをより効果的に管理することができる。

 しかし、筆者らの経験では、ほとんどの組織でいくつかのイノベーションのスタイル、特にジェネレーターが欠けている。本稿では、この欠点を克服するためのステップを紹介したい。