訓練する

 ほとんどの企業、そしてビジネススクールのトレーニングでは、将来の企業リーダーが最適化と実行を好むように導かれる。なぜならば、すでに解決した問題を将来のリーダーに提示する傾向があるからだ(フレームワークとは、遡及的に問題と解決方法を組み合わせるものである)。

 1973年に遡ると、経営思想家のヘンリー・ミンツバーグは、マネジャーが短期的な仕事にほとんどの時間を費やしていることを示した。言い換えれば、筆者らの研究でも明らかになったように、マネジャーのほとんどはインプリメンターなのだ。しかし、それは変えることができる。

 たとえば、トレーニング方法の一つに、問題の多い環境に身を置くというものがある。

 日本企業を対象とした筆者らの研究では、業績のよい企業では、研究開発部門に採用されたエンジニアや科学者が、研究開発部門ではなく営業部門からキャリアをスタートさせていることがわかった。その理由を尋ねると、「与えられた問題を解決するという考え方はしてほしくない。顧客の問題を学んでほしい」との答えだった。

 また、これらの企業は、仕事の流れや現状のやり方に対して「不満を抱く」ようにトレーニングすることで、効果的な従業員提案制度を構築していた。そして、そこで発見された問題を「金の卵」、つまりイノベーションや改善の機会と称して、チームに解決させていたのだ。その成果は定期的に追跡調査され、称賛の対象になっていたのである。

 筆者らの研究に参加した別のグループは、通常とは異なるタイプのオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)を行うことで、恩恵を得ていた。それは、あるファストフードチェーンのマネジャーからなるチームで、インプリメンター17人、オプティマイザー4人、コンセプチュアライザー2人、ジェネレーター2人で構成されていた。

 このチームでは、正しい問題を発見し、定義するために時間をかけることなく、ソリューションを試していたことに気づき、行動を変えた。ソリューションを見つける期限を緩め、事実の発見と全体像の形成というコンセプチュアライザーとジェネレーターの行動に、より多くの時間をかけるようにしたのだ。

 チームの意識を「実行」から「概念化」「生成」に転換させる方法はいくつかあるが、このケースでは、マネジャーが交代で顧客にサービスを提供することによって、それを実現した。その結果、これまで知られていなかった問題が発見され、定義され、当初の期限よりも短い時間で実行に移すことにつながった。

 実際に接客をすることで、より実践的なジェネレーターでありつつ、洞察力に富んだコンセプチュアライザーとして考えることができるようになったのだ。