伝統的な企業が近代化するチャンス

 パンデミックは、ビジネスのあり方にも新しい時代をもたらした。企業はビジネスプロセスをより柔軟に変化させる必要性に気づいた。たとえば、リモートワークでは、自宅でズーム会議を行う以上のことが要求される。銀行の為替取引プラットフォームの管理者は、自宅からも会社のオフィスにいる時と同じように仕事ができるようになった。

 ハイブリッドワークへの移行が恒久的になり、これを深化するためには、新しい人事システムやワークフローの再構築、eコマースのプラットフォームの新設と更新、エンジニアリングの改善、サイバーセキュリティの向上などが必要だ。パンデミックの最中にこれらのシステムの構築に出遅れた企業も、人材が流入するこの機会に、その取り組み方を示すことができる。

 1年前なら、意欲的な若いソフトウェアエンジニアは、実店舗を持つ小売業者のeコマース部門より暗号資産の取引所に魅力を感じただろう。しかし、テック企業が人員削減を進めるなかで、実店舗を持つ小売業者や、完全には近代化されていないものの健全なファンダメンタルズを持つ企業が人材の採用でテック企業に勝てる場面も出てきた。

採用すべき人材とは

 伝統的な企業は、次のようなことを実現できる人材を積極的に採用しなければならない。つまり、リモートワークへの移行、カスタマージャーニーの分析と最適化、カスタマーサービスのオートメーション、AIによる洞察を収集・活用した営業効率の向上、従業員のパフォーマンス管理のオートメーション、サプライチェーン管理の改善、人事計画の最適化などだ。

 デジタル・トランスフォーメーション(DX)の成功例には、ターゲット、ナイキ、ホームデポ、玩具メーカーのハズブロ、ベストバイなどがある。失敗例はゼネラル・エレクトリック(GE)、フォード・モーター、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などだ。いずれのケースも、変革の取り組みの成否を分けたのは従業員だった。

 伝統的な企業としては、一連のレイオフを機に、次のようなスキルを持つ従業員を獲得すべきだ。

・デブオプス(開発チームと運用チームが協力してソフトウェアやシステムを開発・運用する手法)
・カスタマーエクスペリエンス
・クラウド
・オートメーション化
・プロダクト、プラットフォーム
・データマネジメント
・サイバーセキュリティ、プライバシー