キャリアの転換点を乗り切るために
アンビバレンスをどう活用するか
では、アンビバレントな状態のせいで道に迷うのではなく、その利点を活用するためにどうすればよいのだろうか。
以下に紹介するステップは、自己洞察力を高め、自身に備わっている多面的な性質に気づくためのツールとして、アンビバレンスを利用する際に役立つはずだ。それができれば、創造的な問題解決を加速させ、「白か黒か」という二項対立の思考から脱却できる。一見、相容れない、対立しているように思えるアイデンティティや目標を融合させ、時間をかけて本当の自分を実現するのである。
ステップ1:振り返る時間を持つ
アンビバレントな状態に好奇心を持ち、自分が何を感じているのか、見極めるために立ち止まろう。
アンビバレントな状態は不快感を伴うため、人はその不快感を自身の置かれた状況全体に当てはめてしまう傾向がある。何かが間違っている、あるいは自分は決断が苦手だというサインだと解釈してしまうかもしれない。しかし実は、この不快感があなたをより望ましい未来へと導く道しるべとなる可能性もある。
感情は、あなた自身に関する情報を提供してくれる。複数の感情を同時に抱いているのなら、それは自分にとって大切なアイデンティティが複数存在し、大切な何かが失われる可能性があるというサインかもしれない。アンビバレントな状態によって自然と生み出される「立ち止まる瞬間」を利用して、評価を下すのではなく複雑な感情に好奇心を持ってアプローチし、自分が何を感じ、なぜそう思うのかを見極めよう。
たとえば、自分自身にいくつか質問をしてみたり、メモをまとめたりしてみるのも一案だ。「職務の変更は楽しみではある一方、そのために必要なトレーニングの量に不安を感じていますか」「いまのチームを離れるのは残念であるものの、努力によって昇進を勝ち取ったことを誇りに思っていますか」「企画が通らなかったのは恥ずかしい一方で、問題の多いクライアントと仕事をする必要がなくなって安堵していますか」。
このプロセスを、スキルの構築、さらには新しい言語の学習ととらえよう。自分の感情を具体的な表現で描写(「感情の粒度」と呼ばれる)すればするほど、感情をコントロールするスキルが高まることが、研究によって示されている。また、感情を分類することで、その感情の原因をより深く理解でき、その結果、状況に応じた感情のコントロールがしやすくなる。
さらに、自身のアンビバレントな感情を、あなたを支えてくれる協力的な「味方」の人と共有しよう。そうすることで力を合わせ、複雑な問題について、より優れた統合的で革新的なソリューションを見つけやすくなるはずだ。