リバースメンタリングプログラムを
立ち上げて継続する
年齢や世代を超えた絆をさらに深めるために、筆者らは「リバースメンタリングプログラム」の導入を提唱している。これは、年下の社員が自分より年上の社員のメンターとなる取り組みのことで、上級幹部やマネジャーがソーシャルメディア、コラボレーション(若い人ほどチームでの協働が得意な傾向にある)、ワークライフバランス、トラブルシューティング関連のテクノロジーの問題などについて知識を深める一助となる。
そうした分野の知識を得ることで、年長者は若い人の仕事の進め方や好みについて理解を深められる。また、より内省的になり、変化を受け入れやすくもなる。たとえば、「若者はなぜオフィスで人間関係を築こうとしないのだろう」と疑問に思う代わりに、「私も、状況が許す場面では在宅勤務を選び、バランスの取れた生活を送ってみよう」と考えるようになる、という具合だ。
一方、メンターとなる側にも、自信やコミュニケーション能力が向上するというメリットがある。メンターとメンティの間には必ず何らかのギブアンドテイクが生じるため、勤務年数の長い同僚をより人間的、かつ多面的な視点で見られるようになるのだ。
ただし、この手のプログラムは、メンターとメンティの双方にみずからすすんで参加する意思があることが重要だ。また、ペアを選定する際には、どのような指導をしたいか、何を学びたいかに基づいてマッチングを行うべきだ。
メンター関係が終了したら(通常6~12カ月後)、人事部長やマネジャーは、どのような進展があったのか、そしてその成果を会社全体にどのように活用できるのかを評価する。この評価は、社員の士気を高め、戦略的成果を促進する格好の機会となる。
たとえば、顧客の抱える課題に世代を超えて取り組むことで、よりよい解決策を生み出し、関係を改善できるかもしれない。あるいは、社員が各自の専門分野について定期的に指導を行うタレントアカデミーのようなものの足掛かりになる可能性もある。
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5つの世代が入り混じる昨今の職場において、エイジダイバーシティはチャンスの宝庫だが、世代間の差違の扱いには慎重を期す必要がある。さもなければ、世代間のギャップや壁が不信感と軽蔑の念を生み、最適とは言いがたいソリューションを生み出してしまいかねない。
ワークショップでパーパスの意識を共有する、チーム発足時に互いの違いに焦点を当てる、リバースメンタリングプログラムを立ち上げて継続する──こうした工夫ができれば、リーダーは年齢や世代の違いを最大限に生かせるはずだ。
"3 Strategies to Bridge Generational Divides at Work," HBR.org, December 23, 2022.