5. フィードバックを行い、心理的安全性を確保する

 傑出したスポンサーは、過小評価グループの従業員が具体的に褒められる機会があまりなく、成長に役立つ詳細なフィードバックを受ける機会も少ないことをよく理解している。スポンサー側が「相手を傷つけないための配慮」を示した結果、マイノリティが重要なフィードバックを得られないケースも少なくない。その点、スポンサーとして優れている人物は、スポンシーに対して、その人物の現状と評価を率直に伝える。

 たとえば、スポンシーの自己評価が上司の評価と一致していない、評価が分かれていた上司が離脱したことを受けて新たにネットワークを築き直す必要がある、上層部に対してインプレッションマネジメントを行うべきだ、といったことを伝える。このような場合、スポンサーは、スポンシーに重要な情報を届ける懸け橋の役割を果たしているといえるだろう。

 また、優れたスポンサーは、過小評価グループの従業員がみずからの弱点や成長が必要な分野を打ち明けたり、次にどのようなステップに進みたいかを語ることを躊躇したりした時、過小評価グループではない従業員以上に厳しい目で見られがちであることも、よく理解している。そこで、スポンシーがキャリアにおける野心と自信の欠如の両者を安心して表すことができ、完璧であることが価値の尺度にならない場をつくることに努める。

 そのような雰囲気を醸成するために、自分の欠点や過去の失敗を率直に語るスポンサーもいる。ある人物は、それまでに犯した失敗も包み隠すことなく、自分のキャリアの歩みを振り返ったという。そうすることによって、「キャリアという道を前進していくうえで、失敗は付き物だ。それは、キャリアパスに何か間違いがあるという意味ではない。だから、臆さずに自分の失敗についても語ってほしい」というメッセージを発することができた。

6. スポンサーシップについて話し合う

 スポンサーが、自分の担当するスポンシーを支援するのは重要だが、それだけでは社内にスポンサーシップの文化を築くことはできない。

 その点について、筆者らが関わった2つの組織では、スポンサーシッププログラムを導入したことによって「スポンサー同士が意見を交わす機会」という、思いもよらぬポジティブな効果が生まれていた。一つの組織ではエクイティパートナーの間で、もう一つの組織ではシニアリーダーの間で、そのような会話がなされるようになったという。スポンサー同士が、自分たちが何をしているのか、何をすべきだと思うかを話し合い、プログラムの懸念すべき側面を率直に語り、どうすれば自社のダイバーシティを拡大させるための生産的な行動のために協力し合えるか、意見を交わしているというのだ。

 一方の会社では、スポンシーがスポンサーに対して、スポンサー同士で活発に話し合うことを具体的に求めていた。縦割りの壁に阻まれて、狭い範囲でしかコミュニケーションが生まれず、ネットワークを広げられなければ、スポンサーがスポンシーのためにキャリア開発の機会を見出しにくくなると懸念したためだ。

 もう一方の会社では、スポンサーシッププログラムが女性の人材に関する社内の会話を様変わりさせた。あるシニアクラスの女性は、スポンサーシッププログラムが発足する前後の変化について、筆者らに次のように語った。

「人材登用に関する会話で、女性が話題に上るのを聞いたことがありませんでした。まるで、女性など存在しないかのようでした。いまでは、スポンサーが自分が担当する女性スポンシーのスキルや能力、実績を紹介するようになりました。その結果、女性の人材に関する会話が、以前より充実したものになっているのです」

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 スポンサーは、自分のネットワークとさまざまな方策を組み合わせて活発に行動することにより、ハイパフォーマーをリーダーの地位に引き上げることができる。その意味で、スポンサーシッププログラムを適切に行えば、自社が採用活動につぎ込んだ投資を無駄にしないための一助になりうる。そして、スポンサーとスポンシーの間に真の結びつきを育むことができれば、両者の人間関係、スポンサーの存在、率直なフィードバック、心理的安全性が大きな活力を生み出し、目覚ましい効果をもたらすだろう。


"What Great Sponsors Do Differently," HBR.org, January 19, 2023.