1. 相手の前に姿を見せる
傑出したスポンサーは常に、スポンシーとの面談の約束を守る。頻繁に予定変更を行うと、本人にはそのつもりがなくても、相手側に「自分との関係をあまり重視していない」というメッセージを発してしまう。そうなれば、スポンシーが過小評価グループに属していて、これまでも排除されてきた経験がある場合は特に、相手の本気度を疑い、スポンサーと関わることに腰が引けてしまう。
スポンサーがどうしてもスポンシーとの面談日程を変更しなくてはならない場合には、直接メッセージを送って理由をしっかりと説明することだ。
スポンサーを務めるように依頼された時点で、スポンサーシップの時間を確保することが難しいとわかっているのであれば、事前にその点を説明して、どのような活動に時間を割くことができ、どのような活動には時間を割けないのかをはっきり伝えるのがよい。たとえば、長時間のメンタリングを行うのは難しくても、自分のネットワークを活かして支援する方法であれば、すぐにできるかもしれない。
2. 忍耐強く接し、すぐに判断を下さない
スポンシーの中には、スポンサーシップを通じて何を得たいのかがはっきりしている人もいるが、そのような人ばかりではない。どの役職に就きたいのかが明確でなかったり、次のステップへ進む心の準備ができていなかったりする人もいる。
スポンサーの多くは、後者のタイプのスポンシーを支援する方法が見出せずに苦戦する。どうすればうまく支援できるかわからなかったり、明確な野心を口にしない人物は意欲や潜在能力が欠けていると思い込んでしまったりするからだ。
たとえば、筆者らが関わったスポンサーの一人は、「キングメーカー」という異名で知られていた。この人物は、自分が担当するスポンシーに対して、いつも次のように問いかけた。「あなたの夢は何ですか」。そして、スポンシーがその夢を実現するために、自分にできることは何でもした。
社内でとりわけ高い地位に就いている女性たちが、その役職に昇進するうえでスポンサー役を務めたのも、この人物だった。
しかし、ある時、非常に高い才能を持っているにもかかわらず、次にどの役職を担いたいかがはっきりしていない女性のスポンサーになると、どうすればよいかわからず、激しいいら立ちを覚えた。この人物は知らなかったが、その女性は妊娠していて、しかもパンデミックの日々への対処で疲れ切っていた。そのため、いまの自分は大きな役割を引き受けるべき時期ではないと感じていたのである。
そこで、このスポンサーは自分の同僚の一人に意見を聞いて、自分のこれまでのやり方を変えることにした。特定の目標を定めずに、スポンシーの女性と人間関係を育むことだけを目指そうと考えたのだ。その行動は実を結んだ。7カ月後、スポンシーは、本人の言葉を借りれば「ゲームに復帰した」。自身のキャリア開発プランを示し、そのプランをスポンサーが後押しできるようになったのである。
傑出したスポンサーは、情報をやり取りするだけの会話(たとえば「いまから1年後、どうなっていたいのですか」といった質問を投げかける)に留まらず、スポンシーと真の絆を育むことに時間とエネルギーを投資する。
具体的には、スポンシーが昇進に関して明確な目標を持っていない場合でも、その人物の潜在能力を疑わず、相手がすぐに次のステップを決められなくても、諦めたりはしない。スポンシーが前に進むように気づきを与え、不確実な世界に足を踏み入れる際には、自分は必ず協力し、一人にしないと約束する。
スポンシーが明確なキャリア開発プランを持っていないとしても、その原因は、そもそも従業員の成長を促す文化が組織になかったり、バイアスの影響で過小評価グループのメンバーであるがゆえに出世が阻まれていたりすることが原因なのかもしれない。高い成果を上げるスポンサーは、そのような問題があるからこそ、スポンサーシッププログラムが必要とされたのだということも理解している。