生成AIのリスクを抑え、その潜在力を解き放つ
サマリー:『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)2024年3月号の特集は「生成AI 戦略と実行」です。深刻なリスクを回避しながら、生成AIを活かすための戦略と実行論について7つの論考から考察します。

生成AIを活かす
戦略と実行

 今月発売号の特集は「生成AI 戦略と実行」です。生成AI(人工知能)の将来性と可能性を見据え、多くの企業が導入の検討を始めています。倫理面や知的財産権の侵害などのリスクを最小限に抑えながら、その便益を最大限に享受するにはどうすればよいでしょうか。生成AIの潜在力を引き出し、活用し、価値創出につなげていく戦略とその実行論について考察します。

 特集1本目「生成AIの潜在力を最大限に引き出す法」では、上記の点を包括的に論じます。調査では、米国労働者の19%が担当業務の半分以上で生成AIの影響を受けることが判明しました。ただし、筆者は「AIの活用は、人間を代替することではない」と強調し、人間の生産性や創造性を高める方策を探ります。

 特集2本目では、「従業員が生成AIを活用するために企業は何をすべきか」という問いに対して、その答えとして独自のフレームワークを提案します。それが、AIの影響を受けるタスクの分類(Segmentation)、タスクの移行(Transition)、従業員の教育(Education)、業績評価(Performance)の英語の頭文字をとった「STEP」です。

 特集3本目「AIプロジェクトを軌道に乗せる5つのステップ」では元リンクトインのデータサイエンティストがプロジェクト成功の秘訣を明かします。選択、開発、評価、導入、管理の各ステップを慎重に検討することが肝心です。

 特集4本目は、IMD研究員兼アドバイザーの横井朋子氏による「生成AIの戦略的な活用で競争力を高める」です。デジタル・トランスフォーメーションの事例を数多く調査してきた筆者が、ドイツテレコムの先行事例から、倫理的な課題を乗り越え、企業に付加価値をもたらすアプローチを提案します。

 特集5本目は、会計ソフト大手インテュイット創業者らによる「自社の戦略に生成AIを組み込む方法」です。生成AIの導入には3つのレベルがあり、そのレベルが上がるほど競争優位が増すことを明かします。

 特集6本目は、「シチズンデベロッパーを企業でどう活かすか」です。コーディングの知識のない実務担当者も、生成AIを使うことでプログラマーのようにコードを書けるようになりました。そのインパクトを伝えます。

 特集7本目では、生成AIがクリエイティブに及ぼす影響について、日本を代表するグラフィックデザイナー原研哉氏へインタビューしました。それが「人間の欲望と道具が共進化する時代は終わりを迎えつつある」です。原氏は、AIが進化する社会において「とらえ所のなさが強みとなる」とも述べます。その真意に迫ります。

 生成AIは発展途上の技術です。これから起きる変化に備えて十分な検討をお勧めします。電子版サービスの開始により、各種論文がいつでも手軽に読めるようになりました。今号を機にぜひ一度お試しください。

(編集長 小島健志)