世界30カ国の経済リスクを多面的に評価する

 不況を抜けた時、各国はどのような姿になっているだろうか。我々ユーラシア・グループは2009年4月、その答えを導き出すために、次の3要素について分析を試みた。

・各国の「不況への脆弱性」
・各国政府の「危機下の経済対策」
・各国政府の「その意欲」

 世界同時不況への脆弱性は、GDP(国内総生産)成長率、および輸出の伸び率における変化で測定できる。

 まず、IMF(国際通貨基金)が発表している主要経済国30カ国のデータを用いて、2009年のGDP成長率は、2005年から2007年までの平均GDP成長率と比較してどれくらい低下するのか、それぞれの国について予想し、ランクづけした。さらに、ブルームバーグから入手した最新データに基づき、輸出の対前年比で見た輸出の落ち込みについて順位をつけた。したがって、ここでの第1位は、GDP成長率もしくは輸出の落ち込み幅が最も小さかった国となる。

 不況から脱した時、各国がどのような状態にあるかについては、政府が経済を安定化させる能力を有しているかどうか、またその意欲が高いか低いかによって左右される。

 多くの国が、経済システムに資金を注入したいと考えているだろうが、財源不足からそれができない国もある。その場合、紙幣をさらに発行するか、どこかから借り入れるだろうが、むろん債務が増え、そう遠くない将来、インフレを招きかねない。

 一方、財源があるとはいえ、政治的あるいは制度的な障害のせいで、それを活用できないという国もある。

 たとえば日本政府は、1990年代、どうにか経済は安定させたが、経営不振にあえぐ金融機関を再編する、あるいはそのバランスシートを無理やりにでも改善させるという政治的意思に欠けていた。その結果、景気の低迷が長引き、こうして「失われた10年」がもたらされた。