企業主導から
政府主導の時代へ

 役人があれこれうるさくても、これに慣れていかなければならない。政府は当面、企業がどのように事業を運営しているのかに、とりわけ強い関心を寄せるだろう。経営者諸氏は、ここ数十年とは比べものにならない厳しい監督に加え、間接的とはいえ、新たな介入を覚悟しておくべきである。

 民間部門の経営者はこれまで、ロビー活動はもっぱら専門家に任せ、表に出てくることはなかった。しかし、政府を煙たがるのではなく、パートナーとして協力できるよう、新たなマインド・セットとスキルを身につける必要がある。

 政府主導の時代は、別に今回が初めてではない。国民の信頼は1世紀以上にわたって、振り子のように企業と政府の間で揺れ動いてきたからだ。一方の信頼がなくなると、もう一方の力が強まる。ただし、度を過ぎると、これまでの信頼が損なわれ、振り子は逆方向に振れる。

 アメリカでは、第1次世界大戦の終結から、民間企業の能力が疑問視されることになった大恐慌の到来まで、企業主導の時代であった。

 しかしその後、フランクリン D. ルーズベルトが第32代大統領に選ばれた選挙が行われた1932年(大統領就任は33年)から、政府の力が大きくなり、その行き過ぎが明らかになった70年代後期までは、政府が主導権を握っていた。

 当時、規制によって成長が抑え込まれ、政府支出によって2桁のインフレが招かれた。税制を多少いじる程度では、イノベーションなど望むべくもなかった。そして、ロナルド・レーガン政権の発足と共に、国民感情は反政府へと向かい、こうして企業と金融界の影響力が解き放たれた。

 そして現在、振り子は再び、いっきに逆方向へ振れようとしている。

 結局、アメリカ経済の3分の1以上を代表する産業部門が、政府によって再編されることになった。ヨーロッパや日本では、この割合がさらに高くなるだろう。何しろ、アメリカ人ならば余計なお世話と考える行動にも寛容であり、またそのような伝統がある。