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「跳弾経済」とは何か
開発途上国から移民が流れ込んでくるというと、先進国の為政者たちは、公共事業への負担、雇用をめぐる競争、人種間の対立といったマイナス面ばかりに目を向けがちである。
ここで見落とされがちなのが、これら移民たちは購買や投資によって祖国に資金を還流させているという経済行為であり、その結果生まれたボーダーレスな巨大新興市場の存在である。
マーケティング・コンサルタントのカミニ・バンガと本稿執筆者の一人であるビジャイ・マハジャンは、2006年に上梓したThe 86% Solution[注1]のなかで、この新興市場を「跳弾経済」(ricochet economy)と表現した。
このような跳弾経済は、新興諸国の経済成長と共に拡大している。たとえば開発途上国において、外国からの送金額はFDI(外国直接投資)に次ぐ規模になっている。この資金フローを稼ぎ出している「移民国家」は、地理的には分散しているものの、その総人口はベルギーとポルトガルとギリシャの合計に匹敵する。
しかし、国や地域ごとに市場を定義している企業が多いため、この新市場の可能性はほとんど気づかれていない。このまま一大ビジネスチャンスを逃してよいものだろうか。
2005年、移民労働者による本国送金額は2300億ドルにも上った。世界銀行の概算によると、うち1670億ドルが開発途上国向けのものであり、これはシンガポールのGDP(国内総生産)を凌ぐ額である。
実際の金額は公式数字の5割増し以上ともいわれているため、先進国から発展途上国への送金額はもっと多いと考えられる。しかも、これは資金フローのみの数値である。物資、旅行、通信なども含めれば、跳弾経済の規模はさらに大きい。