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不況後の勝者はだれか
1893年、アメリカの歴史家フレデリック・ジャクソン・ターナー[注1]によれば、フロンティア(未開拓地)とは、場所を意味するのではなく、その境界が広がったり狭まったりすることで、人々や組織がこれに適応し変化するプロセスであるという。
当時ウィスコンシン大学の少壮教授だったターナーは、フロンティアの役割について、アメリカ合衆国が3世紀にわたって国家の創造に尽力しえたのは、この地が未開であったからであると述べているが、このターナーの説は現代ビジネスにも当てはまるのではないか。
開発途上国はこの30年間、外資に経済を開放してきたが、これによって企業の世界における境界はたえず変化してきた。その結果、多国籍企業は、新興経済の急成長、熾烈な競争、事業環境の複雑性、そして絶え間のない変化に対処を強いられてきた。にもかかわらず、現在の不況がグローバリゼーションに及ぼしている影響に関して、これまで欧米企業が学習してきたことはまるで役に立たなかった。
景気後退の波は全世界に及んでいるが、そのダメージは新興国より先進国のほうが大きい。そればかりか、不況の影響は、先進経済と新興経済で性質を異にしている。これゆえに、世界経済における先進国の役割は変わってしまうかもしれない。そして景気後退が終わる頃には、フロンティアはまた予想外の姿に変わっていることだろう。
今日の経済危機によって、3つの領域で変化が起こった。第1に、開発途上国では、これまで以上に市場が拡大している。
2009年4月、IMF(国際通貨基金)によれば、この2009年、逆風下にもかかわらず、中国は6.5%、インドは4.5%、中東は2.5%の経済成長を果たし、開発途上国全体では1.6%になると予測している。
2008年、新興諸国全体の経済成長は6.1%という勢いを見せたが、これに比べると、ペースはかなり落ちている。とはいえ、「先進諸国の経済成長は2009年、マイナス3.8%減となる」というIMF予測を考えれば、十分注目に値する。
投資会社エマージング・マーケット・マネジメント会長のアントワーヌ・フォン・アットマールは、「不況を脱した時、全世界の生産量に占める新興市場のシェアは、景気後退が始まった時以上に増えていることだろう。したがって、その魅力はいっそう高まるに違いない」と読んでいる。