市場発展のライフサイクル

 選択と集中の問題を解決するためには、市場のライフサイクルの各段階において、効果的なイノベーションについて考察することをお勧めする。市場が発展する初期段階を研究するうえで、技術分野にはそのための材料が豊富にあり、これまで私も、技術採用ライフサイクルの視点から、市場の発展段階を検証する方法について説明してきた(図表1「市場発展のライフサイクル」を参照)。

 このライフサイクルと市場が確立された後の動向を合わせてグラフ化すれば、市場発展の全体像が示されよう。市場発展のライフサイクルは、次の段階からなる。なお最初の4段階は、新興市場の技術採用ライフサイクルに相当する。

(1)初期市場

 新技術が登場すると、それを新しい流行と見なす熱狂的支持者、あるいは潜在的に破壊的と見なす先見者など、新しい物好きの注目が集まる。実用主義の購買者は興味を示すものの、この段階では手を出さない。

 マスコミの関心も集まり、「この新技術は新しいトレンドになる」と大げさに書き立てる。

(2)キャズム(谷間)

 新技術がどっちつかずの状態に陥る。市場に出てしばらく時間が経ち、新鮮味が失われるために、先見者の関心はしぼんでいく。また実用主義者たちが「もう買っても安全だろう」と納得するほど、広く受け入れられているわけでもない。