現実を直視することが再生につながる

 いかなる事業も、その成功に終わりがある。ただし問題は、その終わりが訪れたことに驚く経営者があまりに多いということだ。驚くというのは、彼らが状況の劇的な変化にそれまで気づいていなかったことの証左にほかならない。事実上、これが企業再生という大仕事を極端に、そしておそらく危機的に遅らせている。

 現実を受け止めない限り、企業再生は進まない。そして、再生が遅れれば遅れるほどコストは膨れ上がっていく。再起力の獲得を目指すならば、「そんなはずはない」から「現実に直面しなければならない」に切り替わるまでの時間を大幅に短縮しなければならない。

 このような現実否認の硬い殻を打ち破るには、どうすればよいのだろうか。一つは「戦略はやがては朽ち果てる」という現実を受け止めなければならない、ということだ。

なぜ戦略は劣化するのか

 戦略が衰えるのには、4つの理由が考えられる。

 第1の理由は、戦略はいずれ模倣されることだ。コピーされ、戦略に独自性が失われれば、平均以上の利益を上げる力もなくなる。

 フォード・モーターは〈エクスプローラー〉の開発によって、SUVという新しいカテゴリーを開拓したかもしれないが、いまでは〈キャデラック〉から日産やポルシェまで、ほとんどのメーカーの商品ラインのなかに、車高も燃費も高い大型SUVが含まれている。