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得意な戦略から離れてはならない
オスカー・ワイルドいわく「男は退屈から結婚し、女は好奇心から結婚する。そして双方とも失望を味わう」。
この金言は、企業のM&Aにも通じる。嘘だと思うならば、男の部分を「被買収企業」、女の部分に「買収企業」を当てはめ、失望を味わう人に「投資家」を加えてみるとよい。
M&Aで、期待されるシナジーや競争優位、株主価値を創出できることは少ない。豊饒な土地に目をつけ、めでたく獲得した後、多くの企業がその土地は自分たちには不毛であると気づく。そのような例は枚挙に暇がない。98年のコンパックによるディジタル・イクイップメント(DEC)の買収、2000年のチャールズ・シュワブによるUSトラストの買収、同じく2000年の、エンタテインメント業界の巨人、タイム・ワーナーによるAOL買収などだ。
コンパック、チャールズ・シュワブ、タイム・ワーナーは、たしかに被買収企業が制する市場で主導権を握るチャンスがあった。しかし、被買収企業のビジネスモデルと融合したことで、彼らの競争優位は色あせ、ついには消滅してしまった。
最も優れた戦略とは、最も重要なビジネスモデルを補強することであって、まったく欠けている何かを追加することではない。要するに、「本業を忘れるな」ということなのだが、この表現ではいったい何が本業なのか、明確ではない。
そこで本稿では、これを「利き手で戦え」と言い換える。それには2つの理由がある。第1に、選択肢はそもそも2つしかない。詳しくは後述するが、あらゆる規模の市場で通用するビジネスモデルは2つしかないからだ。そして、両方のビジネスモデルを備えた「両利き」は通用しないことが第2の理由である。原因はいろいろあるが、大多数の企業は、一方を得意とし、他方を不得手とする。
企業は2つのタイプに分類できる
利き手の戦略、すなわち得意な戦略を離れないことの重要性を理解するには、2つの戦略の違いを知らなければならない。