-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
外部要因と内部要因を結びつける戦略論
ポートフォリオ・マネジメントや経験曲線効果、PIM(市場戦略の収益影響度分析)、マイケル E. ポーターの「ファイブ・フォース・モデル」等々──。1980年代半ばまで、我々は戦略について知らないことはないと思い込んでいた。
戦略論の分野は、元ハーバード・ビジネススクール名誉教授の故ケネス R. アンドルーズがその著書『経営戦略論[注1]』で最初に提起したフレームワークを核として、その周辺に形成されてきた。
アンドルーズは、戦略を「企業が活動する環境(市場機会:opportunitiesや脅威:threats)と企業にできること(組織の強み:strengthsと弱み:weaknesses)を最適に組み合わせたもの」と定義している。
この「SWOT」と呼ばれるフレームワークは、発表された当初から注目を集めるものだったが、この定義を構成する2つの側面、すなわち外部環境と内部資源をシステマティックに評価する手法については、ほとんど触れていなかった。
最初のブレークスルーになったのは、ポーターが著した『競争の戦略[注2]』である。彼の研究は、産業組織論のSCP(産業構造、産業行動、産業成果)パラダイムに基づいている。ポーター理論の核になるのは、産業構造が競争状況を左右し、企業行動の方向性が決定されるという考え方である。
ここで最も重要なのは、構造要因(ポーターはこれを「ファイブ・フォース」と表現した)によって、その産業の平均的な収益性が決まり、これが個別企業の収益性を左右するとしたことである。
この分析によって、「正しい産業」を選択し、そこで最も魅力的な競争優位を確保することに焦点が当てられる。このモデルは個別企業の特質を無視するものではないにしろ、明らかに産業構造に注目したものであったことは間違いない。