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近くて遠い2つの組織
営業とマーケティングは密接に関わっており、歩調を合わせることが必要とされる。しかし、現実には異なる機能と位置づけられ、組織も別々である。両部門が一緒に働いたとしても、息が合うことは稀である。
両部門の足並みの乱れは、全社業績にはマイナス要因になる。両部門が連携に失敗すれば、全社的に利益を損なう。反対に、歩調を合わせれば、主要な業績評価指標が飛躍的に改善される。販売サイクルは短くなり、市場参入や営業にかかるコストも下がる。
両者が反目するのには、まず事業規模の拡大によってその関係が変化していくという背景がある。
中小企業には、そもそもマーケティング部門がない。マーケティング戦略は、経営者、営業部門、広告代理店などが考案し、営業と同義とされる。業績が拡大すると、マーケティング担当者が置かれ、営業活動を支援するようになる。
ところが、高業績に伴って事業がさらに拡大すると、マーケティング部門の役割が「製品」(product)、「価格」(pricing)、「場所」(place)、「販促」(promotion)の4P以外にもあることに気づく。マーケティング効果を高めるには、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)が必要と考えるようになる。
営業部門の使命はこれまでどおりだが、マーケティング部門の使命が変化したことで不協和音が生じる。互いに「本来やるべき仕事ができていない」とののしり合い、結果、営業部門はマーケティング業務の一部を、マーケティング部門は営業業務の一部を兼務せざるをえない。すると、営業担当者は「マーケターは長期戦略だけを考えてくれれば十分だ。販売活動は営業に一任してほしい」と考えるようになる。