マルチ・ブランドの弊害

 多国籍企業の多くが顧客を引きつけようと複雑なマルチ・ブランド戦略を展開している。新しいブランドの立ち上げや既存ブランドの活用、ライバル・ブランドの買収、さらにチャネルやサブ・ブランドの拡大により、あらゆる市場で新しいニッチ市場を見つけて、そこに食い込む機会を狙っている。

 しかし、ブランド・ポートフォリオを見直す企業はほとんどない。

 実際、数あるブランドのうち、利益を生むものは一部にすぎない。我々の調査によれば、利益に貢献しているブランドの数は年々少なくなり、ポートフォリオの全ブランドの20%以下に全利益の80~90%を依存している場合が多い。つまり、ブランド全体の80%以上は赤字、もしくは損益分岐点上にある。

 同じ商品カテゴリーに複数のブランドを同時展開すると、マルチ・ブランド戦略に規模の不経済が生じ、目に見えないコストが発生する。これらマルチ・ブランド戦略の弊害に目を向ける必要がある。

 ブランドを立ち上げる時、通常、この新しいブランドの予想売上げと、そのためのマーケティング・コストを比較検討する。マーケティング・コストは経営陣の予想を上回ることが多い。規模の不経済が生じやすいという決定的な欠点があるからだ。

 一つの市場に複数のブランドを導入すると、目に見えないコストが発生し、ある段階で突如壁に突き当たる。一概には言えないが、ブランドがさまざまな顧客セグメントのニーズを満たせなくなった時、問題が表出するのである。