ウォルマートとマイクロソフト:成功の理由

 現代の産業界で突出した地位にある2企業、つまりウォルマート・ストアーズとマイクロソフトの成功について、これまでありとあらゆる視点からその理由が探られてきた。具体的には、先見の明と行動力を備えた創立者、競争優位を確立した積極果敢な手法などが注目されてきた。

 しかし、まるで異なる2企業がそれぞれ優れた業績を収めることができたのは、独力によるものではない。つまり、その成功はそれぞれが属する「ビジネス生態系」の成功を意味しているのである。

 サプライヤー、流通企業、アウトソーサー、関連商品やサービスのメーカー、技術プロバイダーなど、さまざまな企業が、彼らの商品とサービスの創出と供給に影響を与え、また与えられながら、緩やかなネットワークを構築している。

 同じ生態系に属するメンバーはみな一蓮托生であり、それは自然界でも産業界でも同じである。いかに個々のメンバーに力が備わっていようとも、生態系全体の運命に抗うことはできない。

 ウォルマートとマイクロソフトの2社に共通するのは、この事実に早くから気づき、みずからの利益を積極的に追求することはもちろん、生態系全体を繁栄させる戦略に取り組んだことである。一方、多くの企業は、自社のケイパビリティを伸ばすことだけに汲々としてきた。

 これら両者がみずからと生態系の利益のためにまず着手したのは、他のメンバーの業績にも貢献するプラットフォーム(サービス、ツール、技術)をつくることである。