商品ライフサイクルの法則から抜け出す

 商品ライフサイクルとは、商品はベル・カーブ(釣り鐘状の曲線)を描き、上市、成長、成熟、衰退へと体系的に推移するという概念である。「競争優位を獲得する手段」として、この概念はマーケティング・ポジショニング戦略の中心に位置づけられている。

 しかしながら、これはマーケターの視野を狭めるものでもある。大半のマーケターが、ヒット商品のたどる道をえてして画一的に考えがちである。必ずベル・カーブを描くと考えてしまうのだ。さらに、商品ライフサイクルについても同じように理解している。その結果、ライフサイクルの各段階を通じて、どの企業も商品やサービスについて同様のポジショニングを採用する傾向が見られる。

 この視野狭窄症のせいで、商品が成熟度を増すにつれて、その価値を高めなければならず、必然的に過当競争が起こる。このように、商品をたえず差別化あるいは活性化を図る、終わりのない闘いのなかで、通常、マーケターは商品の新たなメリットを陳腐化したメリットの上に塗り重ねていく。

 しかしながら、自社商品を意外な方法によってポジショニング、またはリポジショニングすることで、消費者の認知や評価を変えることができる。商品ライフサイクルの成熟期に突入し、瀕死の状態に陥っている商品を救い出し、再び成長期に戻すことができるし、さらに新商品についても、購入をためらわせるような障害を跳び越して、いっきに成長段階へ推し進めることも可能だ。

 本稿では、3つのポジショニング戦略について紹介する。これらは、いずれも消費者心理の転換を促すものだ。

「リバース・ポジショニング」は、聖域化されている商品属性を切り捨てる一方、新しい属性を付加する戦略である。「ブレークアウェー・ポジショニング」は、商品を抜本的に異なるカテゴリーへと移動させる戦略である。そして、「ステルス・ポジショニング」は、商品の本質を隠すことで、用心深い消費者を新しい商品に順応させる戦略である。