問題顧客とは縁を切りたいが──

 問題顧客の切り捨て、つまり既存顧客への商品やサービスの提供を中止するという行為は、かつては例外的なものと見なされていた。しかしいまや、多くの組織が現実的な選択肢として、その採用に踏み切っている。

 もちろん、新規顧客の獲得コストが際限なく上昇し、異なるセグメントへのクロス・セリングが複雑化するなか、既存顧客の維持が必須であることに変わりはない。しかし、革新的な顧客分類のアプローチとテクノロジーを利用することで、以前より容易に優良顧客、つまり長期的に最も多くの売上げをもたらす既存顧客に注力できるようになった。同時に、問題顧客の退出を促すことが可能になった。

 我々の調査によれば、エンドユーザーとの関係を打ち切る際に共通する理由が4つある。第1に、一部の顧客の利益率が低い。第2に、不採算顧客に対応することで、社員の生産性が低下する。第3に、処理能力を縮小させたことで、すべての顧客にはサービスができなくなる。第4に、事業戦略を転換するという理由である。

 とはいえ、問題顧客の切り捨ては、特定の状況においては正解かもしれないが、往々にして見返りよりもリスクのほうが大きい。また、利益の問題だけにとどまらない。顧客を整理する場合には、さまざまな関係者がその影響を被る。

 たとえば、固定費の高い企業では、切り捨ての対象外の顧客にコストが転嫁されかねない。顧客を切り捨てると、貴重な情報源や実験の場、またイノベーションの機会を失うことにもなりかねない。エンドユーザーのアイデアや意見は、新しい製品やサービスをいち早く見つけ出し、またベスト・プラクティスを開発するうえで役に立つからである。

 顧客を担当する社員たちも無傷ではいられない。多くの場合、社員が長い時間をかけて獲得し、育て、築いてきた関係が壊される。その結果、営業担当者が競合他社へ転職する例もある。