昇進するリーダーは、適応力を行動で示すことができる
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サマリー:多くのリーダーがみずからを「適応力がある」と考えている一方で、それを一貫して行動で示せている人は少ない。シニアリーダー層へと進むためには、単に適応力を備えているだけでは不十分であり、会議や全社的な取り組み、日々のコミュニケーションや人間関係の中で、それを明確かつ可視的に示す必要がある。本稿では、リーダーとして適応力をどのように示すべきか、その具体的な方法と陥りがちな誤りについて示す。

みずからの適応力を示す方法

 AIと自動化、リモートワーク、市場の変動、絶え間ない組織再編など、混乱や破壊に満ちたこの時代において、適応力がリーダーシップの新たな差別化要因となっている。

 昇進の可能性が高いリーダーは、目標を達成し、あるいは上回る高いパフォーマンスを示すだけではない。不確実性に振り回されたり、現状に固執したりせず、不確実性を乗り越えてリーダーシップを発揮できることを、日々のアジリティ、レジリエンス、そして先見性を通じて示している。

 問題は、多くのリーダーが自分は適応力があると称しているものの、それを一貫して示す方法を知っている人がほとんどいないことだ。シニアリーダーへとステップを上がるためには、適応力があるだけでは足りない。会議や全社的な取り組み、コミュニケーション、人間関係において、適応力を明確かつ目に見える形で示す必要がある。

適応力があるリーダーを形づくるもの

 筆者のエグゼクティブコーチの経験から、適応力は3本の柱に支えられていることがわかった。

1. アジリティ

 アジリティとは、優先順位が変わった時に素早く方向転換するだけでなく、周囲を巻き込みながらそれを実行する力である。上層部の意思決定に盲目的に同意するのではなく、先を見据え、変化をイノベーションの入口として捉える視点が求められる。

 筆者は最近、小規模な市場分析チームを率いるエグゼクティブのコーチングをした。彼は会社から、生成AIを中心とするワークフローにチームを迅速に移行させ、報告サイクルを加速し、外部契約者の必要性を減らせなければ、自分を含むチーム全員がおそらく解雇され、人件費削減のために業務はすべてオフショア化されるだろうと、唐突に告げられた。不可能に思える課題だった。チームには会社が必要としている深い組織知を持つアナリストが何人かいたが、AIの経験は限られていた。

 コーチングを始めた当初、彼はこの変化に抵抗しようとしていた。今回の削減案は、チームの業務が持つ繊細さや戦略的価値を無視しており、部下に彼らがほとんど理解していないツールへ即座に切り替えるよう求めるのは不公平だと感じたのだ。

 しかし、コーチングを通じて状況を整理するうちに、抵抗するのではなく、チームの働き方を再構築する機会として捉え直す必要があることをすぐに理解した。彼は60日間でスキルとワークフローのギャップを埋める包括的な計画を策定し、シニアリーダーに提示した。重要なのは、彼がチームを巻き込んだことだ。メンバーの不安を率直に認め、パイロット事業の共同設計に参加させ、この変化を「自分たちの役割への脅威」ではなく「自分たちの将来への投資」と位置づけた。

 パイロットが終わるころには、アナリストたちはプロンプトエンジニアリングの技術を自信を持って使いこなせるようになっていた。新しいワークフローはAIのスピードとチームの緻密な組織知を組み合わせ、半分のコストと2倍のスピードで顧客インサイトを提供することができた。

 結果は明白だった。会社はオフショアリングの計画を凍結し、チーム全員の職が守られた。さらに、AIが人間の専門性とワークフローを拡張する好例としてチームが称賛された。彼自身は、迅速に方向を転換する能力と、チームとシニアリーダーシップを動かす手腕について、アジリティを体現したとして年次の全社集会でCEOから評価され、社内でより大規模な変革を担う立場へと道が開かれた。

2. レジリエンス

 レジリエンスとは、プレッシャーの下でも冷静さを保ち、激動の時代にもパフォーマンスを維持する力である。レイオフ、組織再編、経済政策の変更、M&Aなどは、いずれもリーダーの感情的な安定性を試す。そうした局面で落ち着いた集中力を示せるリーダーは、チームに心理的安全性を生み出しやすい。

 筆者がコーチングをしたシニアエグゼクティブ陣は、3年間で5回のレイオフを乗り越えてチームを率いなければならなかったが、それでも恐怖がチームの支配的な空気とならないよう努めた。彼らは透明性を意識して情報を共有し、市場環境の厳しさや会社の財務上の課題を率直に認めつつ、チームがコントロール可能な領域──自身のスキルアップ、クロストレーニング、成長──に集中できるように導いた。リーダーシップが安定感を示し続けたことは、明確さと一貫性をもたらし、絶え間ない混乱のなかでチームが成果を出し続ける基盤となった。

3. 先見性

 先見性は、反応型のマネジャーと、ビジョンのあるリーダーを分ける。その違いは、今日の指標だけでなく、明日の課題を見通せるかどうかだ。市場データを分析し、競合の動向を追跡し、混乱の初期兆候を、組織に影響が及ぶ前に読み解くことが求められるのだ。

 筆者がコーチングをした中規模の消費財企業のバイスプレジデントは、オペレーションとグローバル調達を担当していた。彼女は数年前に、通商交渉やコモディティ価格、競合の在庫行動に早期の警告サインを察知した。

 そこで、これらの情報を用いて複数のリスクシナリオをモデル化し、自社のサプライチェーンで最も脆弱な部分を特定した。さらに、調達、ロジスティクス、財務の各部門と連携しながら、ひそかにサプライヤーの多様化を進め、生産を前倒しし、組み立て工程の一部をリスクの低い国に移した。あわせて、政府の新たな政策が戦略に影響を与えた場合も、数日で方向転換できるようなコンティンジェンシープラン(緊急時の対応計画)を構築した。

 2025年に関税が発動された際、彼女の部門は競合を直撃したコスト急騰を回避することができた。競合が契約の再交渉や利益率の圧縮に追われている時、彼女のチームはすでに、予測可能な数量、価格、納期で必要な原材料、部品、製品の安定供給を確保していた。彼女の先見性は、収益性を守り、削減されていたかもしれない雇用を維持し、混乱する市場で戦略的優位を獲得した。それが会社にとって数百万ドル規模を(おそらく会社の存続可能性を)救ったことは明らかで、彼女の昇進につながった。

 市場の変動に対する先見性は、方程式の一部にすぎない。リーダーには技術革新と、企業がそれをどのように活用するかということの先見性も求められる。組織にとって将来必要となるケイパビリティを継続的に捉え、新興テクノロジーに合わせてチームのスキルアップを図るリーダーは、より広範なリーダーシップの役割に不可欠な戦略的先見性と企業の準備態勢を示すことができる。

適応力をあなたのリーダーシップのブランドにする

 シニアリーダー層への昇進を目指す時に、「自分は適応力がある」と声を張り上げても信じてもらえるわけではない。日々の行動や関わり方を通じて、適応力をあなたのブランドとして体現する3つの方法を見ていこう。

 変化に対応できるリーダーシップを日常的に示す。プロジェクトが頓挫する、市場が変動する、重要な人材が去るなど、混乱は至るところで起きる。その時にどう振る舞うかが、変化に即応できるリーダーか、それとも硬直したリーダーかの分かれ目になる。変化に即応できるリーダーは、パニックを冷静さへと変えて、不確実性を「実存的な脅威」ではなく「共有された解決可能な課題」として捉える。

 取締役会やCEOは、成長、変革、リスクというレンズを通して物事を見る。その視点に合わせて、自分がリーダーとして考えていることを示すには、過去を守る言葉から未来を形づくる言葉へと変える必要がある。「ずっとこのようにしてきた」という言い方は、適応力の欠如を最も端的に語る。一方で、「これを再考したら何が得られるだろうか」「今日ゼロから始めるとしたら、どうなるだろうか」といった言い方は、知的アジリティを示す。

 また、規模の大小を問わず、変革のイニシアチブにみずから参加することを通じても、リーダーシップの適応力を示すことができる。ある筆者のクライアントは、自分の職務範囲を(さらにはコンフォートゾーンを)大きく超える、部門横断的なAI倫理のワークストリームに参加した。社内で彼女の認知度が一気に高まり、好奇心と適応力のある思考者として、部門の枠を超えて知られるようになった。そして半年後、彼女はより広範なリーダーシップの機会を提示された。

 忘れてならないのは、適応力は伝染するということである。直属の部下と一対一の会話や、チーム全体のタウンホールでは、今後の変化や目の前の変化にあなたがどのように向き合っているかを語ろう。新しいプロセスやテクノロジーを採用する時に自分が感じる戸惑いを認めて、どのように乗り越えるかを共有する。こうした透明性が信頼を生み、共に進化することが企業文化の一部だとチームに伝える。

 共感と説明責任を示す。共感と説明責任は、相反するものではない。共感を示すとは、変化に伴う不快感を人々が消化できるように手助けをしつつ、勢いを維持することだ。

「この変化が大変なことはわかっている。乗り越えられるように私がサポートする」と声をかけながら、期限達成を目指して進み続けることができるリーダーは、心理的安全性とパフォーマンスの一貫性を両立させる。この組み合わせこそが、より大きな役割を担える人材かどうかを評価する際に、シニアリーダーが重視することだ。不確実性の中で人々を支えつつ、明確な期待、高い品質の仕事、期限厳守を実現できるリーダーが上へと引き上げられる。

 次のように自分に問いかけてみよう。

・市場の変動や戦略の転換に直面した時、安定した姿勢と前向きさを示せているか。

・チームが変化疲れに苦しんでいる時、共感と説明責任のバランスを取れているか。

・次の段階へ人々を導くために、十分なスピードで学んでいるか。

 これらの問いに答えたら、不足している部分を見つける。それが成長のロードマップになる。たとえば、自分は共感的に関わるより解決策を優先しがちだと気づいたら、まず変化の影響についてチームで話し合い、そのうえで期待や進む方向を示すという練習をする。最新のAIテクノロジーを把握しきれておらず、それがどのようにビジネスを推進するのか確信が持てないのであれば、AIビジネスの講座を受講して最新のイノベーションと企業への影響を学ぶことも有効だろう。

 結局のところ、共感は人々のエンゲージメントを維持し、説明責任はチームを前進させる。その両方を示せるリーダーは、信頼を獲得し、成熟を体現し、すでに次のレベルで自分が機能していることを明確にできる。

 学びと成長を示す。AI、自動化、量子コンピューティングの台頭により、継続的な学習はもはや任意の選択肢ではなくなった。昇進を目指すリーダーは、新興のテクノロジーがチームと組織全体に与える影響を理解する必要がある。

 リーダーシップチームと、さらには直属の部下の一人ひとりと「ラーニング・オーディット」(学習監査)を行い、将来も有効なスキルと強化が必要なスキルを把握する。これは先見性を示すと同時に、チームが会社にもたらす長期的な価値を重視しているという姿勢も示すことにつながる。

 逆説的だが、リーダーは地位が上がるほど、自身がフィードバックを受けることや成長の機会は減る。常に素晴らしいと言われる環境は慢心を生みやすく、みずから成長を求めようとしなくなる。前進を続けるリーダーは、フィードバックを求め、コーチングを受け、自分の進化に投資して、この慢心を意図的に打ち破る。

 適応力には実践が必要だ。そのため多くの意欲的なリーダーは、エグゼクティブコーチのサポートを受けて、方向転換するべき時を見極め(アジリティ)、新たなリスクやトレンドに対する市場洞察力を強化し(先見性)、衝突や危機を冷静に乗り切る力(レジリエンス)を磨いている。こうした継続的な成長を追求するリーダーは、企業の変化するニーズに適応し、影響力を拡大することに真剣に取り組んでいることを示し、次のレベルでより大きな責任を担う準備ができているというシグナルを発している。

適応力を損なうありがちな誤り

 最も有能なリーダーでも、意図せずに硬直や慢心を示してしまうことがある。適応力と昇進への準備を示そうとする際は、次の3つの落とし穴を避けよう(筆者はいずれも実例を目の当たりにしてきた)。

 安定性と適応力を混同する。会社が頻繁に変革を経験してきたとしても、在籍年数がそのまま適応力を意味することはない。安定して信頼できることは価値があるが、変化のペースに合わせて思考、プロセス、能力を進化させることが、適応力なのだ。つまり、安定性は維持し、適応力は前進させる。

 努力と成長を同一視する。リーダーは、懸命に働きさえすれば昇進への準備はできると考えがちだ。筆者がコーチングをしたあるリーダーは、仕事を高く評価されていたが、より広範な全社レベルの役職への登用は見送られた。なぜなら、彼自身が、優秀なエグゼクティブから戦略的なリーダーに進化する必要があったからだ。

 懸命に働き、問題を解決して、人々があなたと働くことに価値を見出せるようにすることは重要だが、自分のビジョンや影響力、全社的な視点の思考、エグゼクティブとしてのプレゼンス、意思決定力を進化させることによって、プロフェッショナルとしての成長のアジリティが示される。

 脆弱性を避けようとする。多くのエグゼクティブは、不確実性や過去の失敗を認めると信頼を失うのではないかと恐れる。しかし、実際はその逆だ。脆弱性は人とのつながりを築き、信頼性は自信を生む。それら2つが相まって影響力が生まれるのだ。失敗した取り組みから学んだ経験を共有することは、アジリティとレジリエンスの両方を示しつつ、他者も同じことを安全に行える環境をつくる。

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 適応力と学習のアジリティは、ビジネスの変革、イノベーション、人材リーダーシップの基盤となった。アジリティ、レジリエンス、先見性は、たとえ自然に備わっていなくても、フィードバック、内省、継続的な行動を通じて育むことができる。絶え間ない変化の中で、次のレベルに進む準備ができているリーダーとは、あらゆる行動と関わりを通じて、成長が常に自分の一部であると示すリーダーだ。


"Being Adaptable Isn’t Enough. You Have to Demonstrate It." HBR.org, December 09, 2025.