経営をグローバルや連単で
別々に考えるのはナンセンス

日置氏 近年、日本でよく言われるようになったグローバル経営とか連結経営についても、橋本さんは違和感があるとか。

橋本氏 グローバル経営の対義語はローカル経営、連結経営に対しては単体経営ということでしょうが、そもそもマネジメントの対象はグローバルであり、連結なのですから、それを別のことのように捉えることに違和感があります。

 デュポンの場合は事業部制ですから、事業部が同じであれば日本法人だろうが韓国法人であろうが違いを意識することはありません。

 例えば日本企業が顧客で、デュポンジャパンの電子材料の担当者が打ち合わせ、交渉を重ねた末に製品の最終仕様を決め、その後、顧客の本社にオーダーをもらいにいくと、「生産拠点は中国にあるから、デュポンの中国法人にオーダーを出すよ」と言われたとします。日本でも中国でもオーダーを受けるのは同じ電子材料事業部ですから、デュポンとしてはまったく問題ありません。オーダーが中国で出されたからといって、日本の担当者の業績評価にプラスにならないということもない。受注するまでのプロセスをきちんと評価しますから。しかし、こういうケースでは日本企業の多くで問題になりますよね。手柄の取り合いになってしまう。

 その背景のひとつに、日本企業では連結経営と単体経営を別物と捉える傾向があり、大きな企業グループだと子会社が天下り先のようになっているという現状があると思います。

 官僚の天下り批判は以前からありますが、大企業でも同じようなことをやっている。なかには、子会社が独立した出城のようになっていて、そこではかつて本社にいた先輩が城主をやっている。この出城はもう必要がないという時でも、出城にいる先輩城主がもっと兵糧を送ってくれと言ってくる。グループ全体のことが二の次になっているようでは、連結経営も何もありません。

日置氏 付け加えるならば、日本企業の中には連結ベースでのアカウントマネジメントもあまりできておらず、顧客ごとの収益性、裏を返すと与信も十分に把握していないため、ある意味、非常にリスクをとったビジネスをしているケースもあります。日本国内であれば、「信用」をある程度は当てにできましたが、新興国を中心にグローバルにビジネスを拡大していることを考えると、とても危険だなと思います。