日本企業のファイナンス部門へ
「経理部門は事業部とパートナーであれ」

日置氏 これまで伺いましたように、経営思想やスタイルが大きく異なる米系グローバル企業のデュポンと日本企業では、経理部門に求められていることにも自ずと違いがあるのだと思います。デュポンのファイナンスのあり方と比べ、何かオカシイな、と感じる点はありますか?

橋本氏 ここ1~2年頻繁に出ている問いかけとして、「経理部門が事業部とビジネスパートナーになっているかどうか」ということがあります。つまり、自分達のやっている仕事がいかに事業と関わり合いを持ち、役立っているかということです。

 私は、日本企業の大企業や中小企業問わず、多くのCFOの方々とお話をする機会があるのですが、多くのCFOの方は意識しており、言葉には出しています。しかし、私は本当の意味で腹落ちした実践ができてないのではないかという印象を持っています。

 例えば、製造業における原価計算をみても、確かに細かくやっているし、一見精緻にも見えます。ところが、結局のところそれを何のためにやっているのか、ビジネスにとっていかに有用で次の戦略にどのようにつながるかという意識がはっきりしていないようです。

 もう一つは、プロダクティビティ、つまりホワイトカラーの生産性という点です。私どもの場合、ベンチマークの会社から偏差値が送られてくるので、常にコストを意識しながら仕事をしているのですが、この意識もまだまだ明確ではないのかなと思います。

 例えば、工場であればかなり以前から中国などに進出しているのに、経理のシェアードサービスは東京のど真ん中にあるというケースもよく聞きます。自らのコスト競争力をどう強化していくのか、そのようにしなければ会社全体としての競争力にマイナスになるともっと考えるべきではないでしょうか。われわれの競合である欧米企業の多くは、インドや中国のシェアードセンターで業務を行っています。

日置氏 最後に日本企業の経理部門にいる人は、グローバル化が進むなかで取り組むべきことはどのようなことだと言えるのでしょうか。

橋本氏 今でも良く覚えているのですが、若い頃、事業部の人に、「ファイナンスの人間は何も作らないし、何も売らない」と言われました。この言葉から認識すべきことは、「自分達の給料の源泉は何なのか」ということです。当然、手を動かすことだけでは限界があるので、その答えは「経理部門の社員は頭で稼ぐ」ということになります。

 経理部門の中において「頭で稼ぐ」ということには二つあります。ひとつはスペシャリストになること。国際税務やトレジャリーの専門性をもって、P/L、B/S、 CFに直接インパクトを与えられる存在になる、あるいは、各国のGAAPに精通してグローバルベースでポリシーなどを整備するなどの専門性を高めていく道もあるでしょう。