「コンピテンシー」を測る
よく用いられる4つの方法

 ここまで、「コンピテンシー」が何かを説明してきたが、次に答えなければならない問いは、どうやって測るか、である。

 コンピテンシーの評価方法としてよく用いられるものには4つの方法がある。1つ目は、上司が評価する方法。2つ目は、上司、部下、同僚などが多面的に評価する方法。3つ目は、専門のトレーニングを受けた人間がインタビューをして評価する方法。4つ目は、シミュレーション(アセスメントセンター)と呼ばれるが、特定の状況を作りだして、そこでの対象者の行動を観察する方法である。それぞれ一長一短があるので、そのメリットとデメリットをよく理解して適用する必要がある。

 1つ目の上司が評価する方法のメリットは、なんと言っても運用コストの小ささである。日本企業で「コンピテンシー」を人事制度に導入している場合、ほとんどがこの方法であろう。デメリットは、精度のバラツキである。人の能力を適切に評価するには、相当のトレーニングが必要である。そのトレーニングが不十分なまま仕組みだけ導入しても、幾ら直属上司であっても正しい評価は出来まい。

 また、部下や同僚には見えても、上司には見えにくい要素も存在する。ましてや、一部の日本企業のように「Aさんは、年次的に昇進間近だから、少し高めに評価しよう。Bさんは、昇進したばかりだから、優秀だけど、我慢してもらおう」などということが行われると、全く機能しない仕組みとなる。日本企業で、「当社はコンピテンシーを導入しているが、上手くいっていない」という話を聞く場合、たいてい、今申し上げたような、導入・運用上の課題が原因となっている。