コンピテンシーを使った
重要ポスト後継者計画

 最近では、欧米を中心に、さらに進んだコンピテンシーの活用が進んでいる。その1つに、コンピテンシーを使った重要ポスト(職務)の後継者計画がある。この方法では、まず、そのポストに求められる戦略的な役割を詳細に分析し、コンピテンシーモデルを含む人材要件を作る。

 そして、人材要件に対して、候補者の評価(アセスメント)を実施する。需要(人材要件)と供給(候補者)のギャップを見るわけである。その結果を元に、最適な後継者を特定したり、能力開発プランを策定したり、時には外部採用を決断する。それなりにお金と労力がかかるが、重要ポストの後継者選びの成否が業績に与える影響を考えると、費用対効果は十分あるというのが企業側の判断である。残念ながら、日本企業でここまでの取り組みをしているところは、極めて少ない。

 職能型の人事制度を取ってきた日本企業にとって、コンピテンシーは似て非なる概念で、また欧米で発展してきたこともあり、ある種のアレルギーがある。また、かつてのコンピテンシーブームの時に、不十分な形で導入して、成果をあげられなかった企業には、そのトラウマもある。

 しかし、「人」と「仕事(職務)」に対して、同じグローバル共通のモノサシ・ツールを適用すれば、世界中の人、仕事に対して、最適な人材配置や、育成、採用を大きく進めることができる。ITの進化により、最近では非常に使い勝手の良い人材情報システムが利用可能となっているが、グローバル共通のモノサシ・ツールとセットで構築することにより、人材マネジメントをさらに加速できる。多くの日本企業にとって、本格的にグローバル人材マネジメントに取組むべきタイミングだと言えよう。

 人材能力の可視化について、今回は「コンピテンシー」について紹介してきた。人材は奥の深い領域で、これ以外にも有効な切り口が存在する。それらについては、次回以降、ご紹介したい。