2つ目の多面評価は、上司評価の欠点をカバーし、かつ比較的低コストで、ある程度の精度も実現できる方法である。デメリットは、評価者の目線の「甘・辛」によって、評価の絶対値にズレが生じることである。評価の甘・辛は、国によっても異なり、我々の調査でも、日本や韓国は低めに、ラテン系の国は高めに出ることが分かっている。

 また業績が良い場合は全体的に高めに、逆の場合は低めに出やすい。したがって、例えば、赤字会社の立て直しを行っている優秀な日本人は、不当に低く評価される可能性が大きい。人材育成の参考情報として活用することが主目的であれば、多面評価は上手く機能するが、選抜・登用の判断に使うのであれば、後で説明するインタビューやシミュレーションによる方法が必要となってくる。

 3つ目のインタビューは、特に幹部クラス人材のコンピテンシー評価に最もよく使われる方法である。専門用語で実体験インタビューと呼ばれる手法である。対象者が実際に仕事の場面で、成果を出すためにどのような思考・発言・行動をとったのか、その時の気持ち、頭の使い方、行動事例を、あたかもVTRで再現するように深く掘り下げるインタビューを行い、そのとき発揮されたコンピテンシーを評価する。

 インタビューは、通常、トレーニングを受けたコンサルタントが2時間から3時間かけて実施する。そして、インタビューで得た情報を、コンピテンシーの軸と目盛を定義したコンピテンシー辞書に照らして定量化するわけである。コンピテンシー辞書さえ同じものを使えば、世界中の人材の能力を、同じ基準・モノサシで、可視化できる。

 4つ目のシミュレーションは、初級マネージャーへの昇格審査などで使われる方法である。まだマネージャーとしての仕事の経験がない対象者に対して、そのポテンシャルを見るには、マネージャーが直面するような場面を人工的に作りだして、そこでの行動を観察するのが1番である。ただ、上級マネージャー以上となると、そういった人材が直面するような場面を人工的に作りだすことは難しく、インタビューによる方法が適している。