人間性という武器を持つリーダーだけが生き残る
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サマリー:多くのリーダーが過去の成功体験に依存し、現在の役割に適したスキルを見失っている。その結果、信頼の低下やイノベーションの停滞を招く。昇進後に重要となるのは、技術的な専門性ではなく、共感や傾聴、信頼関係の構築といった「パワースキル」である。これは組織を動かし、人を動機づけるための不可欠な能力だ。本稿では、このパワースキルを日々の行動から習慣化し、強固な組織を構築するための3つの実践的手法を紹介する

パワースキルとは何か

 リーダーシップにおいて、あまり語られることのないギャップが拡大している。多くのリーダーは、みずからの役割や現代の職場のニーズに合わなくなったスキルに依存している。

 その影響は意図せず、しかし、至るところに表れている。信頼は損なわれ、従業員のエンゲージメントは過去最低水準に落ち込み、人材は流出し、イノベーションは停滞する。善意の意思決定でさえ、周囲との感覚のずれを露呈する形で受け止められてしまう。これらの問題の原因は、道徳的な欠陥でも性格の問題でもない。スキルのギャップにあるのだ。

 リーダーが組織の階段を上るにつれて、技術的な専門性は差別化要因ではなくなる。その代わりに求められるのは、人と関わり、耳を傾け共感し、大規模な組織の中で信頼関係を築く力である。

 残念ながら、筆者が「パワースキル」と呼ぶこうしたソフトスキルを、選択的なものであるかのように扱うリーダーがあまりに多い。しかし、それではいけないのだ。成功と高いパフォーマンスについて研究している筆者は、コーチングや講演、執筆を行う学者兼ストラテジストとして、これらのスキルを身につけたリーダーが単にパフォーマンスを管理するだけでなく、人々を動かし、動機づける力を持つことを実際に見てきた。

ハードスキルは昇進につながり、パワースキルはその地位の維持に役立つ

 キャリアの初期段階では、測定可能な成果を生み出す能力が成功をもたらす。プログラミングや臨床の専門知識、財務モデリングといった能力だ。しかしキャリアが進むにつれて、技術的な卓越性は、リーダーとしての役割との関連性を失っていく。何が起きているかを理解するために十分な知識は必要だが、たとえば日常的にコードのバグの修正を求められるわけではない。むしろリーダーは、戦略やイノベーションを通じて問題を解決し、チームを鼓舞して最高の成果を出させることによって評価される。

 リーダーは生産から財務に至るまで幅広い領域で差し迫った問題を解決しようと、慌てて動くなど、多大なプレッシャーにさらされることが多い。その場では自分で解決することが最善だと思えるかもしれないが、それは解決策ではない。そうした行動は、チームがみずから学び、成長し、問題を解決する機会を奪っている。そして、それがチームの能力と自信を損なうことになる。

 パワースキルの欠如は、組織の内部に深刻なダメージをもたらす。まず顕在化するのは、コミュニケーションの断絶だ。ハイブリッドチームではトーンが誤解され、フィードバックがうまく伝わらず、防御的な反応を招く。成長途上の有望な人材は、助言を求めても得られないと考えて、次第に相談しなくなる

 影響はコミュニケーションに留まらない。組織文化そのものを静かに形づくっていくのだ。典型的なパターンとして、会議でリーダーが「何か意見は」と問いかけるものの、そのリーダーに真の対話を引き出すスキルがない場合がある。その結果、数人の発言がグループの合意と見なされるか、あるいは沈黙が合意と誤解される。

 こうした状態が続くと心理的安全性が徐々に崩壊し、そのうちに、無難で、表面的なアイデアしか出てこなくなり、イノベーションを推進するような思考はけっして現れない。最良のアイデアが議論の場に出てくることはなく、イノベーションもチームのパフォーマンスも低下する。それでも組織は動き続けるが、ゆっくりと、慎重すぎる歩みになる。

 一方で、リーダーがパワースキルを発揮すると、逆の現象が起きる。チームメンバーは信頼されていると感じ、動機づけられ、組織の一員として受け入れられていると実感する。メンターシップは後づけではなく、文化に深く根づく。チームは互いの意見に敬意を払いながら異議を唱え、アイデアを出し合って磨きあげていく。人々がつながりを感じ、エンゲージメントが高まって、自分の力を最大限に発揮して貢献できるという自信を持ち、組織はより健全になる。こうしてよりよいアイデアが生まれ、結果に対する当事者意識が強まり、パフォーマンスと生産性の向上につながるのだ。