倫理に反する行動を招く5つの障害

 多くのマネジャーが倫理的な組織を運営しようと心がけているにもかかわらず、企業の不正行為は蔓延している。リーダーが根っからの詐欺師で不正行為を直接指示することも、もちろん問題の一つだが、これは稀である。むしろ多くの場合、責任ある立場のリーダー自身が倫理に反する行動に気づかなかったり、知らずしらずのうちにそうした行動を助長したりするため、従業員が倫理規定を曲解してこれを破ってしまうようだ。

 事件が発覚した時、トップダウン型で意図的に行われた不正行為の特徴をすべて備えていた、有名な事例を見てみよう。1970年代に生産されたフォード・モーターの小型車〈ピント〉は、追突事故の際に燃料が漏れて炎上しやすい事件で醜名を流した。同社が欠陥を改修するためリコールを発表したのは、〈ピント〉の炎上により二十数名以上が死傷した後だった。

〈ピント〉発売に当たっての同社の意思決定プロセスを精査したところ、フォルクスワーゲンや他の小型車メーカーとの競争が激化するなかで、フォードが〈ピント〉の生産を急いでいたことが浮き彫りとなった。技術者は、生産前の追突事故試験で燃料タンクが破裂する危険性に気づいていたのだが、すでに組立ラインの準備が整っていたため、経営陣はそのまま生産に入るという決断をした。