「走出去」政策によるM&Aブーム

「中国株式会社」は一見、向かうところ敵なしにも思われる。そう見えるのも無理はない。中国は1970年代後期から現在まで、他に類を見ない経済発展を果たしてきたからである。たしかに中国は、急速に、そしてみごとな改革を遂げてきた。しかし、その陰でそれなりの失敗も経験しているという事実は、見過ごされがちである。

 過去10年間の中国企業による海外M&Aブームは、そうした失敗の大いなる証である。中国政府は、中国がWTO(世界貿易機関)に加盟する直前の2000年、中国企業がこれから生き残るためにはグローバルな競争力をつける必要があると考えて「走出去(ゾウチュチィ)」政策[注1]を発表し、中国企業による海外企業の買収を初めて許可した。

 すると、多数の国有企業が民間企業と同様に、この機会に飛びついた。中国企業によるM&A取引額は、2003年の16億ドルから2006年には182億ドルに急増した。世界は中国企業による乗っ取りの脅威に悩まされることになったのである(図表「『中国株式会社』の買収ブーム」を参照)。