
トイレの天井にはクルマへの夢とあこがれを象徴するミニカーがびっしり。なかには豊田社長のサイン入りも。
サロンのオーナー「ミスターレクサス」として想定したのは、自身がテストドライバーを務め、レースに参戦するほど“クルマが好き”な豊田社長でした。「包み隠さず、クルマを楽しんでいる姿を若者たちにしっかり見せて、結果としてファンが増えてくれればいい」と読売新聞(2013年10月28日付朝刊)の取材に語っているように、インターセクトでは自分基準の「好き」という感覚をコンセプトに置くことで、生活者とつながろうとしています。
例えば、トイレの天井はミニカーで埋め尽くされ、そのなかには豊田社長のサイン入りも含まれています。スペースのあちこちに“クルマが好き”というメッセージがちりばめられているのです。しかし肝心なのは、それをレクサスのオーナーだけに提供するエクスクルーシブな空間にしないことです。

レクサスの「心がワクワクするようなラグジュアリー体験」というコンセプトはCMにも表れている。画像は自立飛行ドローンが街なかを飛び回るレクサスのCM「Amazing in Motion SWARM」。クルマの機能よりも、Amaizingな驚きを伝えることを重視した。
「かっこいいショップや居心地の良いカフェに出かけてくつろいでいたら、その場所を提供しているのがレクサスだったと気がつく。そんな風に利用してもらいたいのです。ステータスとしての高級車から、より身近な自分基準で選ばれるブランドになるためには、お客さまとオープンな関係を築くことが不可欠です。ブランドへの入り口はショールームに行くことだけではありません。ブランドの価値を押し付けるのではなく、まずお客さまの目線で魅力的な体験を提供すること。そうすれば結果として、その先にレクサスというブランドを感じてもらうことができると思っています」(高田部長)
今後はドバイやニューヨークなどへの進出を予定しており、それぞれの都市で人々の交流が生まれるサロン的な空間を作り出していくそうです。
レクサスのブランディングは民主主義的なラグジュアリー
「どうだ!」というブランド価値の訴え方ではなく、ブランド自身が好奇心を持って、能動的に新しい価値観を取り入れていく。まさに変化の途上にあるレクサスのあり方は、果たして日本発のグローバルな高級車ブランドとして成功するのでしょうか?
共著に『なぜ日本企業は「グローバル化」でつまずくのか』があり、グローバル企業のマーケティング事情に詳しい国際的ビジネススクールIMD日本代表の高津尚志氏は、こう語ります。