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高津尚志氏:IMD日本代表。著書に『なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか』(共著)など。

 「グローバルで活躍するためには、異なる文化や価値観を積極的に受け入れることが不可欠になります。だからこそ、人々と相互に影響を与え合えたり、コミュニケーションの結果として的確なニーズを吸い上げたりすることができるわけです。しかし、レクサスはそれを強力なリーダーシップに集約させるのではなく、人々の交流を促す媒介者になることで実現しようとしています。こうしたある種の民主主義的なブランディングでラグジュアリーであろうとしているのが、レクサスの特徴です」

 ほとんどのラグジュアリーブランドがデザイナーやクリエイティブディレクター、そして歴史的な財産をブランドの“顔”にすることで、一貫した“哲学”や“思想”をアイデンティティとしながらプロモーションを行っています。

 しかし、レクサスが生活者とのコミュニケーションで重きを置いているのは、豊田社長の“クルマが好き”という感性であり、共にブランドの価値を作り上げていくという“共創”とでも言うべきパートナーシップです。この「好き」というささやかな、けれども強い共感を集める価値観を軸にしたブランディングは、ソーシャルメディア時代にマッチした“自分基準のラグジュアリー”の源泉になり得ます。

 「これはレクサスが1989年誕生という高級車市場のなかで比較的に新しいブランドであることが関係しているのかもしれません。歴史や個人の才能に裏打ちされた強固なブランド力で訴求していくのが今までのラグジュアリーだとしたら、レクサスは民主主義的であることで、人々の生活と密接に結びついたライフスタイル提案型のラグジュアリーとでもいうべきブランドになろうとしている。グローバル市場においては、今という時代に適応していくうえでの挑戦だと思います」(高津氏)

高級車ブランドが「好き」に共感し合うコミュニティをつくれるか

 日本の若き匠とのコラボで生まれた雑貨類「CRAFTED FOR LEXUS」、国際的なデザインイベント「ミラノ・サローネ」にインスタレーションを出品するなど、感性の刺激を求めるレクサスのプロモーションは、多様なジャンルに広がっています。