
西田善太氏:『BRUTUS』編集長。博報堂のコピーライター職から、1991年にマガジンハウス入社。『GINZA』編集部、『Casa BRUTUS』副編集長を経て、2007年12月より現職。
「アート、クラフトマンシップ、フードなど、さまざまな個人の『好き』を集めてブランドに内包していくレクサスの戦略は、カルチャーと人をつなぐ雑誌的な試みでもあります」と語るのは、雑誌『BRUTUS』編集長の西田善太氏です。
まさに『BRUTUS』が2012年12月1日号で行った「Car Life」という特集は、「クルマといると、かわること、わかること。」をテーマに、クルマをハブとして見えてくるライフスタイルに焦点を当てたものでした。
「クルマ離れが叫ばれている現状で、クルマの魅力を伝えるだけでは、今の読者には届かないと思ったんです。特集では蒼井優さんが大きなクルマを探しているとか、『暮しの手帖』の松浦弥太郎編集長がポルシェに乗っているとか、人とクルマにまつわるストーリー、つまり『Car Life』を紹介していきました。結果として、できあがった誌面は好評でした。今のレクサスのプロモーションは、こうしたクルマに対する意識の変化をうまくすくい取ってまとめ上げることで、ユーザーの幅を広げていこうとしている印象を受けます」(西田氏)
『BRUTUS』が「好き」でつながる人とクルマの関係に焦点を当てたように、レクサスの戦略は、まさにこうした雑誌的なブランディングの途上と解釈することができます。

雑誌『BRUTUS』2012年12月1日号。「Car Life」と題し、今どきの人とクルマにまつわるライフスタイルを特集した。
ただ、雑誌がブランドになるためには、まずそこに載っている内容が魅力的でなければなりません。あるテーマや目的に沿って一生懸命に「好き」を集めてパッケージすることで、初めて読者はブランドとしての雑誌名を意識するようになり、そのブランドを中心として「好き」に共感し合うコミュニティが生まれます。その事情はレクサスも同様です。
「この挑戦がうまくいくかどうかは、とにかく続けることで、ブランドに対する信頼性を高めるしかない」と西田氏は言います。つまり、これから「レクサスにはかっこいいものが集まっている」という意識が人々の間に定着していくかどうかが、ブランディングとしての成否の分かれ目といえそうです。