一方、ヤマダ電機が一見ライバルとも思える地域電器店と手を結ぶのにはメリットがあるからだ。第1に、すべての顧客が大型量販店に家電商品を買いに来る訳ではなく、そうした顧客をカバーしてもらえる。これによって、大型店と地域店の共生が可能になる。第2に、量販店ではできないきめ細かいサービスを提供できる。第3に、地域店への販売数量が伸びれば、ヤマダ電機のメーカーへのバイイングパワーを一層強化できる。コスモス・ベリーズのFC、VC先は電器店にとどまらず、燃料店、工務店、工事店、電気材企業、設備業、カタログ通販、引越し業など、65業種に及んでいる。また取扱商品としては、家電だけでなく、リフォーム、太陽光発電、電動アシスト自転車、日用雑貨まで幅広い分野に拡大している。

 ヤマダ電機は、コスモス・ベリーズを通じ、ヤマダ電機のネット通販「ヤマダモール」の商品を、地域電器店の従業員が家庭に御用聞きに行くビジネスを計画中である。これによって、取扱商品を食品、日用雑貨にも拡大する方針である。コスモス・ベリーズは、生業的な地域電器店のバリューチェーンに入りこむことで、地域電器店とも戦わず、大手量販店にもメリットがある仕組みを作り上げたのである。

④バンドラー

 バンドラーとは、コンピューターの「マルチベンダー」のように、自社製品の中に他社製品を組み込み、顧客価値を上げると同時に、競合他社が同じ事業をやることに対して参入障壁を高くする方法である。オフィスグリコの事例を見てみよう。

 グリコはかつて、自社の菓子を入れた自動販売機を置く「ジョイモア」事業を始めた。スイミングスクール、ボーリング場、高速道路のサービスエリアなどでは上手くいったが、4~5千人のオフィスでは上手くいかずに、撤退に至った(注3)。オフィスにおける菓子の購入の中心は、意外にも女性ではなく男性であった。菓子が好きな女子社員は、コンビニまで出かけて菓子を買ってくるが、男性はわざわざコンビニまで出掛けるケースは少なかった。こうした男性社員にとって、手軽に買える社内の自販機は歓迎された。しかし、買える商品がいつも同じという事がネックとなった。菓子は必需品ではなく、その日の気分で好みも変わる。自販機は、そのニーズと合わなかったのである。