最後の一撃は、エイスース(ASUS)といったデルにPCのOEM供給をしていた台湾企業が自らブランドを冠し、PC業界に参入してきたことである。デルはコスト構造で彼らにかなうわけがなく、そもそものデルの強みであった「安く良いものを早く」を崩されてしまった。つまり、自ら強敵を作ってしまったのである。

 先ほど述べたように、デルは現在マイケル・デルのもと非上場化し、事業再建の途上にある。クラウド化が進展する中、これまで獲得した数十万件の法人顧客ベースの活用や、ソフトやSI企業の買収によって付加価値増大を図るなど、様々な打ち手を講じようとしている。

環境変化の大きさ × ビジネスモデルの強さ

 「強い」ビジネスモデルが壁にぶち当たった際には、どのような打開策があるのだろうか。環境が変わっている以上、原点回帰以上の何かが必要である可能性は高い。

 非常に大雑把な議論ではあるが、環境変化の大きさと、これまでのビジネスモデルの強さの2軸で考えると、ビジネスモデルの変革に関しては、企業を4つの象限に分けることができる(図表「環境変化×ビジネスモデル」)。

 

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図表 環境変化×ビジネスモデル

 ①の例としては、比較的ニッチな市場におけるフォロワー企業があげられるであろう。戦略的な自由度は小さいもののあまり変革を求められることもなく、大きな成長は望めないものの継続して存続することが可能である。

 ②は、基本、長期的にここに留まることはできない象限である。確率的かもしれないが、何か大きな環境変化のうねりの中で、うまく事業機会を捉えることによって強いビジネスモデルを構築し、④の象限へと移ることが企業存続の鍵となる。ちょうど、創業期のデルは、②からスタートして④に移ったと表現できるかもしれない。そして、今また②の象限に戻りつつあるのである。

 ③の象限に属する企業は、ITベンチャーやサムスンなどの韓国企業がそれにあたるだろう。グリーは、SNSから携帯ゲームの事業に、DeNAは、オークションから同じく携帯ゲーム事業にすばやく舵を切った。サムスンは、半導体やTV事業において、投資にコミットする戦略で大きく成長した。いずれの場合も環境変化が大きいがゆえに、スピード感のある意思決定が必要条件として求められていたのである。