戦略的かつ抜本的な変革に未来は左右される
この論考で我々が伝えたいことの中核は、未来の事業環境を生き抜くためには、自社がどのような事業領域で付加価値を提示していくかという戦略的な議論と、どのように自社の人材を管理していくかという議論の間に存在するギャップを、できる限り埋めなければならないということである。
すでに述べたように、単一の解決策であらゆる組織の問題が解決するとは考えてない。また、伝統的日本企業がこれまで培ってきた方法論が、その歴史的成長に貢献したことも理解している。しかし、少なくとも過去の成功を彩る三種の神器は、すべてとは言わないまでも、多くの企業にとって時代の要請にそぐわなくなっている。
そして、変化の方向性として我々が提示するのは、自社のビジョン、方向性、戦略を中核に添え、それらを中心としてパフォーマーとトランスフォーマーの二つに大分される多様な人材が協調し合いながら事業を前進させる、次世代のネットワーク型の組織である。それは何も、日本企業だけが進むべき方向性ではない。第四の産業革命とも呼ばれる大きな産業構造の変化が、事業の成功に求められる人材の質を世界中で大きく変容させつつある。いわゆるホワイトカラーの仕事が消える一方で、画一的な人事慣行の強みも次第に消えていくだろう。よりダイナミックに、迅速に、多様な人材を一つの組織内に共存させるため、まったく新しい発想で人的資源管理を練り上げていかなければならない。
我々は、こうした新たな人事施策を検討することは、最高経営幹部の最も重要な戦略的意思決定であると考えている。ぜひ問い直ししてほしい。自分の時間がどれだけ人的資源管理を戦略的に行うために投じられているだろうか。
もちろん、人材活用においては、絶対的な正解も間違いも存在しない。だが、明らかなこととして、戦略的なアプローチを実践するためには、自社の持てる人材をどのように活用し、どう競争に勝つかを詳細に検討し、そのうえで、それに求められる資源のあり方を定めることである。すなわちそれは、過去に機能した方法論に依存することは、未来をつくり出すことにはつながらない事実を意味している。