一部の製造企業はすでに、中国以外の工場でも生産活動を縮小せざるをえなくなっている。そのような企業は、日々増えるばかりだ。
たとえば、自動車大手のフィアット・クライスラー・オートモビルズは2月14日、「中国から部品が届かないため、セルビアの自動車工場の操業を一時停止する」と発表した。韓国の現代自動車も、「中国でのコロナウイルス流行により部品供給が滞っているため……韓国国内の工場の操業を停止する」と明らかにした。
この2つの自動車メーカーの事例は、私たちの分析と矛盾しない。中国製の部品がセルビアや韓国に届くまでに要する期間は欧米より短いので、生産活動への影響が30日後よりも早く生じたのだ。
テクノロジー産業への影響も大きい。アップルは2月17日、1~3月期の売上げが会社予想を下回るとの見通しを明らかにした。同社が挙げた悪材料は2つだ。1つは、新型コロナウイルス感染症の流行が中国の生産活動に影響を及ぼし、iPhoneの供給が制約を受けること。もう1つは、中国市場での需要が大幅に落ち込んでいることだ。
ほかの業種も、このダブルパンチの直撃を受けている。あるグローバルな日用消費財メーカーの関係者が私たちに語った話によれば、その会社の今年2月の中国での売上高は前年同月の半分に減っているという。
ウエディングドレスのような製品にも影響は及ぶ。ウエディングドレスの多くは中国で製造され、世界中で販売されている。ある報道によると、いま中国でウエディングドレス専門の工場が稼働していないため、この夏のウエディングシーズンにドレスの供給が大幅に不足する見通しだという。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、港湾にも影響を及ぼし始めている。ロッテルダム港湾局のアラード・カステラインCEOは、こう述べている。「コロナウイルスの影響はすでにあらわれている。中国の港を出航する船の数は20%減っている」。フランスのルアーブル港の活動も減速しており、今後2ヵ月で30%減る可能性もある。米国の港への打撃も、金融市場に関する分析で考慮され始めた。
要するに、新型コロナウイルス感染症は、世界の製造業に大きな影響を及ぼすものと覚悟しておくべきだ。その影響が本格化するのは2~3週間後。そして、ダメージは向こう数ヵ月続く可能性がある。
HBR.org原文:How Coronavirus Could Impact the Global Supply Chain by Mid-March, February 28, 2020.
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