Power Appsで開発したアプリが、約5億円の価値を創出
同氏が開発したアプリは「Punch Memo」。“Punch(パンチ)”とは、残作業(配管のサビを取る、バルブのフランジを締めるなどの作業)の指示のこと。それを現場でスマートフォンを使って即座に登録し、グループ共有と進捗管理を行えるようにした。

パンチは1つのプロジェクトで5万個も発生するという。従来は現場でパンチするべき箇所を見つけると、写真やメモで記録し、事務所に戻ってExcelにまとめ、担当者にメールで共有するという流れだった。この情報をもとに担当者が現場で作業し、終了後にExcelを更新していた。
「全体の作業時間は約50分かかっていました。Punch Memoを使うと登録から担当者への情報共有まで一括で行え、位置情報も取得できることで作業場所の検索や道案内、ステータスの共有も簡単。時間にして5分ほどで済みます。プロジェクトごとに5万個のパンチがあるので、工数費とプロジェクト数を考慮すると、約5億円もの価値を創出できる計算です」

また日揮グローバルでは、すべての施工対象物にユニークな“タグナンバー”を割り振って管理しており、それをPunch Memoにも入力するようにしたことで、主幹システムと連携してより詳しい分析が行えるようになったという。
「たとえば、現場の進捗管理に役立てられます。タグナンバーから、ボトルネックになっている現場のパンチの内容を把握し、プロジェクトをうまく回せるようになりました。早く工期を終わらせることで、建機などの副次的なコスト削減効果も得られました」
IT化が遅れている建設業界において、日揮グローバルの取り組みは特筆すべき事例だ。紙とペンで行っていたコミュニケーションを改善するアプリを、アプリ開発の専門家でない1人の社員がPower Appsで開発するだけで、非常に大きな価値を生み出したことになる。今後は、これらのアプリを、コラボレーションツールであるMicrosoft TeamsやPower BIとMicrosoftツールと連携して、パンチステータスの更新をTeamsの通知で知ることができるようにしたり、パンチの状況をDashboardで可視化したりするなど、もうワンステップ上の相乗効果を狙っていく意向だ。
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