(4)柔軟に労働力を割り振る

 レストランなど、新型コロナウイルスにより大きなダメージを被った業種では、社員が通常の業務を続けられなくなった。そこで、一部のアイデア豊かな中国企業は、社員を解雇したり自宅待機にしたりせず、復旧計画の立案など、新しい有意義な活動に人手を振り向けた。なかには、他社に社員を貸し出した会社もあった。

 売上げの大幅な減少に見舞われた40以上のレストランとホテルと映画館は、人員配置を効率化して多くの社員を業務から外し、eコマース大手アリババ傘下の新しい食品スーパーマーケット「盒馬(フーマー)」に貸し出した。盒馬は、新型コロナウイルスの感染拡大によりオンラインショッピングの利用が急増し、配達スタッフを早急に増員する必要に迫られていたのだ。

 餓了麼(ウーラマ)、美団(メイトゥアン)、京東(ジンドン)傘下の「セブンフレッシュ」などもこれに続き、レストランから人手を借りた。

(5)販売チャネルの構成を調整する

 感染が拡大している地域では、リアル店舗など、人と人が直接対面する形態の小売業のビジネスは厳しく制約された。そこで、消費者向けビジネスの分野でも法人向けビジネスの分野でも、一部の俊敏な企業は新しい販売チャネルへの移行を急いだ。

 化粧品大手の林清軒は、40%の店舗を閉鎖しなくてはならなくなった。特に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まった湖北省武漢では、全店舗が閉鎖になった。

 同社はこの状況下で、閉鎖された店舗に所属していた100人余りの美容部員を配置転換し、オンライン上のインフルエンサーとして活動させた。メッセージアプリの「ウィーチャット」などを活用してオンライン上で顧客に働き掛け、オンラインショッピングでの売上げを伸ばすための活動に取り組ませたのだ。その結果、同社の武漢での売上げは昨年同期の3倍に達した。

(6)ソーシャルメディアを活用して、社員やパートナー企業との調整を行う

 リモートワークの導入に伴い、多くの中国企業はウィーチャットなどのソーシャルメディアを利用して、社員の活動を調整し始めた。

 中国最大の下着メーカーである都市麗人は、ウィーチャットを活用して売上げを増やす取り組みを開始した。社員が友人や知人などに自社商品を宣伝するよう促しているのだ。その際、会長とCEOを含む全社員を対象にした売上げランキングをつくるようにした。社員の参加意欲を高めることが狙いだ。