●成長度を測定して依存関係を回避する

 コンサルティングやコーチングを専門にしている人は、クライアントに必要とされなくなった後も、収入が続くような経済モデルを採用していると批判されるが、それは妥当な批判だろう。同じように、指導する相手が自分を追い越していくことに不安を感じるリーダーは多い。

 だが、コーチングの関係を結ぶ根本的な理由は、相手の成長に力を貸すことであるはずだ。もはや自分を必要としないところまで成長させられるかどうかがコーチの力量であり、自分を超えてほしいと思えるかがリーダーの力量である。依存関係は、一時的に自分の強さを感じられるだけで、相手を弱い人間にしてしまう。

 これを回避するには、設定した成長目標に対する進捗を測定することが必要だ。たとえば、リーダーの部下に仕事を任せる能力を向上させようとする場合、コーチはそうしたタイミングで、リーダーが同じようなことを繰り返していないか、進捗を確認する。

 新たな支援のニーズや機会が出てくることはありうるが、同じ問題であまりに長い間「必要とされ」続けることは、支援する側もされる側も進歩がないことに満足している明らかなサインだ(いつまでも人に頼っているほうが、安心できる場合もある)。

 ●適度にプレッシャーを与える

 リーダーからよく聞かされる不満がある。「私のコーチは、あまり強くプッシュしてくれなかった。面談では普通に話をするだけで、焚きつけられている感じがしなかった」

 アドバイザーをしている人の中には、関係を危うくするような、「正直すぎる」問題点の指摘はあえてしない人が多い。同様に、衝突を避けるために厳しいフィードバックをしないリーダーも多い。コーチやコンサルタントが「向こうにはそれを聞く準備ができていない」などと言い訳をして刀を収め、リーダーが「もう四半期猶予を与えて好転してもらおう」と言って、業績不振を指摘せずに済ますのを聞いたことがある。

 リーダーが厳しいニュースを受け止められるように慎重に教育するのもよいが、それを遅らせるのは誰のためなのか、正直に認めることも同様に重要だ。それがどれほど耳の痛い話でも、ありのままの事実を示されることが、クライアントにとってのコーチやコンサルタントの最大の価値だ。厳しいメッセージを敬意と思いやりをもって伝えるのが、信頼されるリーダーである。

 その真逆で、弱い者いじめをするコーチやリーダーもいる。一歩間違えれば悪口にもとれる乱暴な言葉は、支援される側の自信と意欲を失わせる。上から目線で独断的な物言いをし、一方的に何かを言い放つ。

 事なかれ主義の支援者も、いじめをする支援者も、同じ結果に到達する。すなわち、いつまでも自分を必要とさせるのだ。優秀なリーダーやコーチになるには、プレッシャーをかける適切な度合いを、判断できるようになることが必要だ。それは自信と意欲を維持させ、確かな進歩を遂げさせるだけのプレッシャーである。

 他人の成功に貢献することは、神聖な特権だ。「何よりも、害を与えてはならない」という誓いは、医師と同じくらい我々にも当てはまる。

 他者が自分の助けをあてにしていると思うと、素晴らしい気持ちになる。しかし、インパクトを与えたいという欲求が、他者の業績に不可欠かつ重要でありたいという欲求をゆがめるとき、我々は恐れるところの無用な存在へと転落し始めている。なぜなら、他者ではなく、自分自身のエゴのためにやっているとわかれば、相手は離れていくからだ。

 仕事と人間性が密接に結びついたいまの世界では、両者の健全な切り分けを維持することが、支援者には特に重要だ。人助けは「与える」ものであり、あなたが「なる」ものではないのだから。


HBR.org原文:How to Overcome Your Obsession with Helping Others, February 18, 2020.


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